落ちた!!!

と思った。
ぎゅっと目を瞑った。
衝撃はなくて、気付いたら下は綿あめみたいにふわふわ。
ホッと胸を撫で下ろして立ち上がる。
きょろきょろと辺りを見回すと何もない。
空は薄い桃色で、金平糖みたいな星が浮かんでた。
どこまでいっても地面は綿あめ。
自分いがい何にもない。
ああ、これは夢か。
気づいた途端暗転。

ばっちゃーん!

水面にぶつかる音がして
はげしい衝撃音がなる。
夢だから体は痛くない。
でもひどく冷たい海だ。
深海まで沈んだ。あたりはくらい。
ゆめだから呼吸なんて気にしなくて良い。
上を見ると誰かが泣いてる。
ああ、この水は涙か。
だからひどく冷たいんだ。
どうしたんだよ。
泣いてるだれかに届くないはずの手を伸ばした。

ばっびゅーん!

急に身体が浮いた。
ものすごいスピードで深海から水上まで出て、
泣いてる人の前に出た。
泣いてるひとは俺のことが見えてないみたいだ。
何かをつかむように手を握って、ずっとずっとめそめそめそめそ泣いている。

「トーニョ」

泣いてるひとはアントーニョだった。
ずっと下向いて泣いてる。
昔の俺には泣きすぎって言ったくせに。
立場逆転じゃねーか。
ちくしょー
泣くなよ。
子分は親分の泣く姿なんて見たくねーもんだぞ。

なんで、話しかけてるのに無視するんだよ。
おい、泣くんじゃねーよトーニョ。
ちくしょー
お前に声が届かない俺の方が泣きたいぞ。
ちくしょーちくしょー
早くこんな夢覚めろ。
起きたら絶対トーニョ泣いてねえよ。
あいつなら笑ってる。
だから覚めろっつーんだ。
瞼上がれ上がれ上がれ


あ、暗転。


ぱちり、

「ロマ……ロマーノ!!も、、よかった……ほんまによかったわあ…ロマぁ………起きてくれてよかった………」
「………死なねーよちくしょー。俺は国なんだぞ」
「おん。でも、ずっと寝ててんで……ロマーノ…ほんまよかった……」

起きてもトーニョはめそめそめそめそ泣いてた。
俺はベッドの上で、夢の中みたいにトーニョに手を伸ばしたら、ずきっとした。
腕も足もお腹も気づいたら包帯ぐるぐるだった。
何があったかは思い出せない。

「トーニョ……笑えよ、ちくしょーめが」

トーニョは笑った。
いつもの優しい表情。

ああ、目が覚めてよかった。

「夢ん中はもうこりごりだ。このやろう」




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