非現実の習作

ヒロトと風丸

素足のヒロトは階段の上に座って銀河鉄道を待っていた。今日来るのかと尋ねれば確かに今日来るよ彼は言った。どうしてわかるんだと言えば今日の周期がぴったりだからさと言った。銀河に天気は関係無い。色々の星の位置が銀河鉄道を此処に導くんだよ。彼が階段の上からそう言ったから風丸は上を向いてそうなのかと応えた。
階段は古びれてはいるが上れはしそうだった。白い階段だった。一歩踏み出せばトンという音がしたのでもう一歩進めばまたトンと音がした。上方のヒロトはずっと南の空を見ていた。風丸は足下に気を付けながら白い段を上がっていった。途中、ポケットに入っていたはずのクリアブルーのシャープペンシルが無くなっていることに気付いたが気にしないことにした。ゆっくり階段を上る。ヒロトは近くなっていくが、なかなか彼のいる段には辿り着かなかった。別段疲れるわけでもないので何も言わずに上って行くが、おかしいなとは思った。
なんとかヒロトのいるところに着けば、そこから見えたのはネオンの洪水だった。メチルオレンジだとかプルプレオ塩だとかの光が溢れてた。
「すごいだろう。放電の渦さ」
「銀河鉄道は?」
「大丈夫。銀河鉄道には天気は関係無い」
そう言うと彼はズボンのポケットからエーテル瓶を取り出してネオンの渦に捨てた。
「どうして捨てるんだ」
「あれがあると乗車できない」
「なんで」
「駄目なんだよ。ルールさ」
規則という言葉にはあらがえないので彼はそれ以上何も言わなかった。強い光で分からないが、エーテル瓶は多分割れてしまったのだと思う。
銀河鉄道はなかなか来ない。待っている間に星の屑は何度も燃えて落ちて行ったがそれでも来なかった。ヒロトにまだ来ないのかと尋ねれば、まだまだだよと言った。大体たったの一時間しかたってないだろうと言われれば、風丸には確かに其の通りだと思うしかなかった。また星の屑が燃えた。薄青の炎が空を駆けた。
「あともう一つ燃えたらやってくるよ」
「じゃあもうすぐか」
「そうだね」
黙って少しの間待った。空は静かだった。ネオンは電波で溢れかえっていた。吐息の音が耳についた。西の空で星が燃えた。中指くらいの距離を一瞬で走って消えた。
「ああ、やって来る。ほら、聞こえるだろ」
ヒロトの一言に、風丸にも蒸気の音が聞こえてきた。まだ小さな音だ。汽車の姿は見えない。彼は目を凝らして東側を見た。
「ああ、見えてきた。ほら、黒いのが、見えるかい?」
またヒロトにそう言われて風丸は汽車の姿を認識することが出来た。だんだん、黒い塊が大きくなる。汽車は近付いてくる。
「本当にあれが銀河鉄道なのか?」
「そうだよ。あれが銀河鉄道さ」
「乗るのか」
「もちろん」
目の前に停まった黒い塊に、風丸は身じろぎした。乗り込もうとしたヒロトはそんな彼に不可解な顔をしたが、構わず乗車した。

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