傷を抉るのは気持ちが良い。
彼女が嫌がることをすると、彼女は私の思った通りの反応をするから、嬉しくなる。例えば、もう限界だって位に努力してる彼女の肩を抱いて「大丈夫、基山さんならまだ頑張れる」って言うと、彼女は泣きそうな顔をして「ありがとう」って言う。ホーム・ドラマを一緒に見た後に「面白かったよね」って笑えば、彼女は目を泳がせながら頷く。
いけないと分かっていても、なんだか彼女の心が読めたような気がして、気分が良いから私はそれが止められない。美人で頭がよくて優しくて、全てで私の上をいく彼女の弱味を握るのは、まさに蜜の味というものだった。

彼女を苛めてしまった日の夜はごめんね、という気持ちをこめて彼女を抱き締める。嫌だ嫌だと抵抗する日もあれば、なすがままになってる日もあるけれど、どちらの時も私を言葉の上では許してくれる。しかし心はずっと傷ついたままなのだ。私はそれを、また別の時に踏みにじる。彼女はもっと傷つく。心で涙する。私も実は傷ついている。でもそれを、知らぬふりして彼女を傷つけながら抱き締める夜。私もまた傷つく。

(露営のともしび)
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