ガラスの仮面なんて格好良いけど、そんな実用性の低いものには中々お目にかかれない。実際俺のマスクも、彼女の仮面も軽くて壊れにくい素材で出来ている。
実用性。重要なワードだ。アイキューならノートのスミにメモするだろうな。そう、大切なのは、どれだけ使えるかだ。俺らにとって有益か否か、だ。


***


女の子がブランコに揺られてる。その目は暮れかけた空を見てる。
冷えた風がひゅるり。彼女の肩がふるり。震えた。
夕暮れだよ。帰らないと。だけど女の子はずっとブランコに乗ったままだ。
ねえ、帰ろうよ…。日が暮れるよ…。一緒に、帰ろう…よ…。


***


「余計な感情なんか要らないの。私たちに必要なのはダイアモンドダストの勝利よ」
リオーネはそう言って仮面をつけ始めた。俺は自分が嫌いでマスクをつけた。
仮面は不思議だ。つけただけで自分が自分でなくなる。俺はこれで強くなるし、リオーネはこれでもっと冷静になった。
余計なものに惑わされなくなった彼女は、全体を見るチームの司令塔となっていった。ダイアモンドダストとガゼル様の為に戦う彼女は極めて冷静に周りの状況を判断する。その冷静さは素晴らしかったが、俺は何か違和感を感じた。


***


凍地さんと栗尾根さんはよく喧嘩をする。
普段は仲がいいのだけど、些細なことですぐに喧嘩をしていた。あんまり喧嘩ばかりだから最近はちょっとギスギスしてるの。でも本当は仲良しだよ、と言ったのは倉掛さん。彼女はそう言うがやっぱりこの二人は心配だった。でも、僕じゃあ何も出来ない、ね…。
そんなことを思ってたある日の帰り道だった。少し遠回りをするとある公園に、栗尾根さんがいた。一人でブランコに乗っていて、あ、また喧嘩したんだ。と思った。
喧嘩をした後、凍地さんはお兄さんにべったりする。栗尾根さんは一人ポツンとうつ向いてる。今ブランコに乗ってる女の子は、その寂しそうな栗尾根さんだった。
僕はいつもその彼女に声をかけようとして、ためらって、黙ってる。今もそう。だからいつも栗尾根さんはポツンとしてるし、それを見て僕も悲しくなる。


***


リオーネの仮面は彼女を守る盾なのだと思う。余計な感情を消し去るのと同時に、周りから自分を守っているのだ。
俺もマスクをつけてるし、メイクもしてる。でも、俺とリオーネでは何かが違った。俺のは変身願望なのだが(少なくとも自分ではそう思ってる)リオーネは違う。彼女の仮面は、
(逃げ、だ)
夕焼けのブランコの女の子。あの子は結局、晩御飯の時間まで帰ってこなかった。
「遅くなって、ごめんなさい…」
あやまる彼女を俺は、…僕は、見れなかった。声だけ聞いてた。
ごめんよ。あの時僕が何か言えればよかったのに。
(彼女はまだ孤独なままさ!)
だから俺は今から彼女の仮面を取ろうと思う。寂しさから一歩を踏み出すんだ。
ガゼル様への忠誠だけに生きるリオーネをめくりとってやる。君の支えになるから。なんて大それたことは言えないけど、でもこれは、
(俺らが変わるため、だ)
俺はこれから君の仮面を剥がすよ。今まで隠れていた君自身と向き合うから。久しく見ていない君の素顔を見て言うんだ。
「リオーネ、サッカーしよう」

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