ヒスイと人に関する3つの習作

玲名とルル

「みてみて!きれいっポ〜!」
ルルが道で拾ったという石はとても澄んだ緑だった。光に透かすと、きらり!私もルルも息を飲んだ。
「誰が落としたのかな」
「さあ〜?」
ルルは綺麗な石を持ってはしゃいでる。きゃいきゃい言う声をバックに私はどうしてこの石が道に落ちてたのか考えた。だって不思議じゃないか。こんなに綺麗なのに道端に置き去りにするなんて。
(捨てる人は勝手だ。いらなくなったら、ポイ。だもの)
食べかけの弁当も、読み終えた新聞も、可愛い猫も、邪魔な子供も、
(ポイ)
考えたら悲しくなった。それで下を向いたら「あ〜!ま〜た玲名が難しいこと考えてるっポ!」ってルルが大きな声を出した。
「別に何でもない」
「何でもなくないっポ!」
「…。だってその石は捨てられてたんでしょ?綺麗なのに…」
ルルは一瞬キョトンとすると、にこって笑った。
「玲名あのね!この石は私たちに拾われるために捨てられたっポ」
「……」
「お父さんとか、皆に会うためっポ!ね?」
「…うん」
私が頷くと、ルルは幸せだよって顔をした。そうだね。私はここの皆もお父さんも大好きだもの。これ以上の幸せはないよね。だから私も幸せだよって顔をして「ありがとう」って言った。



照美と風丸

宝石は嫌いだと彼は言った。理由を聞けば華やぐものの象徴だからと返ってきた。誰よりも華やいでるお前が言うなよ。
「だからこそさ。華麗であるのは僕だけでいい」
とんだナルシスト野郎だなと笑えばよく言われるよと溜め息を吐いた。
「それにその石は従者のつけるものだ」
俺の手から柔らかな緑の石を取り上げると彼はそれを床に捨てた。ヒスイは高い音を立てて床に落ちた。
「僕という宝石があるのに、ヒスイなんて必要ないだろう」
人を射殺すように微笑みかけるこいつ。俺は笑いながらとんだナルシスト野郎だなともう一度言ってやった。



吹雪と染岡

ただの雑誌の広告の写真。しかしそれすら僕の恐怖となり得る。
(大丈夫。これはあの紫の石とは違う)(それにこれはただの写真さ)
染岡君が見ている誌面上の緑の石。それを見て発せられる「すげーな」の声。
(違う違う違う)(ただこんなものを買う人もいるんだなってだけ)
染岡君は金額を読み上げると「金持ちになりてー!」って一人で笑った。そうして次のページを読み始めた。少しほっとした。
(でもまって!)(もし染岡君が将来お金持ちになったら…?)
僕はまた不安になった。どうしよう。染岡君がまたいなくなっちゃう!嫌だよ!
「染岡君!」
「何だ?」
僕は衝動で名前を呼んだ。しかしその瞬間ふっと気が付いた。
(僕は染岡君を信じてない!)
それがとても恥ずかしくて僕は笑顔をとってつけて言った。
「ううん。やっぱり何でもない。気にしないで」
「そうか?じゃあいいけどよ」
染岡君は雑誌にまた目を落とした。ごめんね染岡君。君が大切な人過ぎて逆に僕は君を疑ってしまうんだ。僕はそんな自分が憎いよ!
誌面の緑を思い出せばそれはまばゆく美しく輝くのに。
(僕はどうして、醜い)
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