両手を繋いでコマみたいに時計と反対向きに回った。はじめはゆっくり。だけど段々加速して周りの風景は細長い線の組み合わせに変わっていった。目が回る!そう叫んだら俺も!とヒロトも笑いながら言った。でも彼はぐるぐるを止めようとはしなかった。寧ろ更に加速させてた。目が回る!とまたヒロトが言った。回転は止まらない止まれない!くるくる回って加速して気が付いたらびっくりするくらい早く回ってた。
あんまり加速してたら体がそれについてかなくて、俺はバランスを崩してしまった。そしたら勢い余って二人して宙を飛ぶようにして床に倒れた。俺は目を回してそのままぐったり。ヒロトも寝転がったけど、笑顔で息を整えていた。
「風丸君。回るの楽しいね」
「何処がだよ。頭ぐるぐるだぜ俺」
「うん。でも楽しいね」
無邪気に笑ってるヒロトに俺は、そうだな。と適当に相づちを打っておいた。お前ジェットコースターとか大好きだろ。俺は絶対お前とは遊園地にいきたくないからな。
目を瞑った。スイッチOFF。渦を巻いていた天井が真っ暗になった。

ヒロトはたまにひどく子供じみたことをしようとする。今のだってそうだし、些細なこと(椅子を引いたら床と擦れて音がするとか)を彼は嬉しそうに繰り返しするんだ。飛んできたシャボン玉を嬉しそうに割っていたこともあったかな。普段は大人びている彼がこんなことをすることに、はじめはとても驚いた。不健康な白い肌の色と不釣り合いに見えた。でも、当然だけどそれに俺は徐々に慣れていってしまったんだ。それどころか、寧ろこっちの方がヒロトの本当の姿なんじゃないかと最近は考え始めている。不自然に大人だったヒロトは、今不自然に子供ぶってバランスを取ってるんじゃ無いだろうか。

だいぶ頭がぐらぐらするのも収まってきた。スイッチON。目を開けた。数度しばたいたらヒロトが俺の髪をもてあそんでいるのが視界に入った。
「さらさらしているね」
「どーも」
俺のいい加減な返答が聞こえているのかそうでないのか、分からないがヒロトは髪をすくったり落としたりを繰り返している。
「風丸君の髪って綺麗な水色だね」
ヒロトが楽しそうに言った。翠の目がきらきら輝いている。エメラルドってああいうふうに光るのかなとぼんやりした頭で考えた。
「空の色だ」
ヒロトはきらきらと笑っていた。俺は窓の外の青に思いを馳せた。俺らの上にいつもあるあの広い空。どこまでも続いてる澄んだ空。その空の青に似ていると言われるのは悪い気はしなかった。だから、さんきゅ、と礼を言った。彼は、ふふふと笑っただけだった。
「ねえ、俺の髪って何の色だと思う?」
ヒロトの幼い質問は止まない。そして俺の髪をすくって落として、幸せそうに目を細めている。
「…さあ、なんだろうな」
俺はそんなヒロトにぴったりの答えを見つけられなかった。赤は有るようで無い色だ。難易度が高いんだよ。これは心の中のつまらない言い訳なのだけど、とにかく適当に誤魔化してしまったのだ。そしたらヒロトはふふふと笑ってから、あのね、と口を開いた。緑の目がぎらりと輝いた。
「君だけを愛する薔薇さ」
…なんだよ!その不意打ちは!そんな、恥ずかしいじゃないか!それは普段の落ち着いた、大人びた声で言われたのだった。驚きで俺はがばりと起き上がってしまった。しかし起き上がってから俺がしたことと言えば、口をパクパクさせ顔を赤らめるだけだった。情けないな、自分。あんまり俺が慌ててると彼は「なんてね!」と悪戯っぽく笑って幼さを残した表情に戻ってしまった。だけど緑の目は薔薇の刺のように光っていて、こいつは確信犯だ、と俺は思った。


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