何時だって大好き!と突然抱きついてきた風丸に基山はビクリとしました。
「いきなりどうしたの風丸さん」
「ううん。ヒロトが好きなだけ」
と風丸は歌うように言うと夢見るような表情になりました。彼女の笑顔は私の中の純粋で美しいところをそっと慈しんでいる。私を抱き締める腕は光や風となって優しく包み込む。彼女の温もりが今の私の全てでした。でももし何も身に付けずに彼女の腕に抱き止められたなら、温もりどころか私達は溶けて二人一緒になれるような気がしました。二人が一つになって宇宙をつくればどれだけ素敵だろう。彼女の赤い目は南十字星のガクルックスになるの。天の南極に立つ私の道標。私は貴女に被さる南の冠になりたい。花で作った冠になって貴女を美しく飾りたい。星屑に彩られた貴女と手をとって天を舞ってゆくの。そして二人で流星になって宇宙を駆けてそして失神!目を開いたら目の前の彼女の瞳に星が輝く。…そんなだったらどれだけ素敵だろう!
基山がそう思って風丸の胸に顔を埋めると暖かな光の香りがして、嗚呼風丸はやはり星なのだ。きらきら輝いて私を包み込み導いてくれる。ずっと彼女の腕の中にいたい。私を繋ぎ止めていて。離さないで…!そうすれば夢は現実になって、そうこれはパステルカラーの美しい夢になるのだから。
基山が風丸に包まれながらとろりと溶けて夢見心地になっていると甘い囁き声がしました。
「ねえヒロト」
なあに風丸さん。私貴女となら何処にだって行けそうなの。朝焼けのエッフェル塔でもクリスタルのメトロポリタンでも。何処でも、よ。
「ちょっと…苦しいんだけど」
その瞬間、基山は風丸から飛び退くと
「ご、めんなさい!」
と言いました。なんだか顔が蒸気していて、恥ずかしく思いました。
「ううん。大丈夫。それよりお腹空かない?」
と風丸は言うと、鞄からビニールの包みを二つ取り出しました。
「はい。どら焼き」
どら焼き。基山はいきなり夢から覚めたような、そんな気分になりました。確かにあんこは好きだけど!
「ロマンチックを返して」
「え?」
茶色い菓子を頬張ってる風丸からどら焼きを奪うと、基山は自分のと合わせてむしゃむしゃ食べてしまいました。あんこは美味しいけど、やっぱりどら焼きはどら焼きの味がして、少し悔しくなりました。私達が一つ宇宙になるのは難しいみたい、と基山はため息を一つ吐きました。


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