風丸と佐久間と鬼道


「どっちがいい?」
と差し出されたのは白々しいハート型のチョコレイトだった。にやついている風丸はビター・チョコレイト。困ったように笑ってる佐久間はホワイト・チョコレイトを出している。
「俺のと佐久間のと、どっちがいい?」
風丸がにやつきながら(しかしその姿はむしろ妖艶である)もう一度言った。どちらか選べと。俺は試されているのか。
「誰の入れ知恵だ?」
まさか風丸がこんなことを考え付くとは思えない。佐久間なら尚更だ。大方吹雪あたりが俺の反応を見て笑ってるに違いない。そうタカをくくって風丸を見れば意外な返事が帰ってきた。
「入れ知恵?これは俺が佐久間に提案したんだけど。…まあ結果はきっと吹雪に話すけどさ。せがまれたから」
俺は、今まで築き上げられていた風丸へのイメージが崩れ落ちてゆくのを感じた。どうしたんだ風丸。あの真面目で誠実なお前は何処へ行った?女子への免疫が全く無い、恋愛に疎いお前は何処へ行った?何がいけなかったんだ。吹雪のあの黒さが移ったのだろうか。それともダークエンペラーズ時代のせいか。いやそうだ。そうに違いない。これはエイリア石の後遺症だ!くそっ。ふざけるな研崎!
ショックを隠し切れない俺は黙ったままだった。風丸は俺の次のアクションを心待ちにしている。ああ可哀想に佐久間。こんなことに付き合わされるなんてな。
「お前は…どうなると予想しているんだ」
「予想?」
「俺がどちらを選ぶか」
風丸はくすくす笑うと得意そうに言った。
「俺はどっちももらわないと思ってる。音無辺りを理由にしてさ」
「成程。佐久間は?」
佐久間は自分が訊ねられたことにうろたえながらも
「まあ、どちらか選ぶんじゃないかと、思ってますけど…」
と言った。佐久間らしい答えだ。いじらしいな。
「で、どうするんだ」
風丸はそんなに反応が楽しみなようで、答えを催促してくる。仕方ない。返事をしてやろう。
「ふ。そんなの、両方とももらうに決まっているだろう」
「はあ!?」
驚いている一瞬の隙をついてチョコレイトを2つとも取った。風丸が取り返そうと躍起になっているがもう此方のものだ。
「ずるいぞ!両方なんて!」
「誰も必ずどちらか一方を取れとは言って無いだろう」
と言うと風丸は悔しそうな顔をした。ちなみに佐久間は唖然としている。
「お前達の想いは有り難く貰っておくとしよう。ホワイト・デイには、三倍にして返すさ」
男に三倍返しされても何も嬉しくないぞ!と不服そうな風丸と、心なしか嬉しそうな佐久間をその場に残して部屋に帰った。全く可愛いな。ホワイト・デイには三倍どころか十倍にして返して驚かせてやろう。最高級の菓子の詰め合わせでもふたりに贈ろうか。
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