ウルビダとマキュア

彼女の柔らかい肌の上を私の手がすべる。腰の端を上に上がり、乳の下で僅かに止まる。次に私が体の輪郭をなぞるようにして脇の下まで手を上げると、蒼緑の髪の女は「くすぐったい」と言って含むようにくすくす笑った。私がそれについて困った顔をすると彼女はくすくすを止めた。しかし目は細めたままだった。
「次は、キスしてよ」
私は彼女に従って唇から指先まで至るところに接吻をした。それが終わり「満足か」と聞いたら「うん」と言った。
「ウルビダ様は優しいから好き」
そんなこと昔の彼女なら言わなかった。自分を好きな人が自分に自分の好きな事をするのは当然。彼女に貢げないなら捨てる。それで泣いた男はいくらでもいた。それが何時からか、私が彼女に従うのは「優しいから」で、だから私を好きなのだと言う。何時からだっか。
(私はどんな貴女も好きなのに)
自分達に出来た格差は大きかった。力を得るために失ったものにウルビダは泣きそうになった。



緑川と風丸

緑川の髪を結う風丸の瞳には必ずメランコリィの色があった。風丸は必ず念入りに髪を櫛でとかし、髪が浮き上がらないようにまた念入りに紐でくくった。結び終わると必ずくくられた髪先を一回するりと触るのだった。

「もし俺が女だったら」
風丸はよくそう言った。
「こんな風に悩まなくていいのに」
緑川がそんなに彼奴が好きなのと聞いたら「うん」と悲しそうに頷いた。それから「変だろ?軽蔑したって構わないんだぜ?」と言った。緑川は「そんなことないさ」と言って彼を慰めるのだった。

風丸は女の子になりたがっている。緑川の髪を人形の髪をとかすように優しく扱う。しかしどれだけ理想の女に近付いても彼は紛れもない男なのだ。はじめから叶わないことなど分かっているのだ。しかしその絶望が彼のメランコリィをより深く、そして彼を女性よりも儚く美しく昇華させる。
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