暖かい色合いの店内に白と緑ってどうなんだろう。目立つなあ、と緑川は思った。
チェーン店の安っぽい装飾に、ごてごてしたレシピ。アルバイトのウェイトレスの衣装の軽さが程よいバランスをとっている。ファミレスに中学生が行くなんて別段可笑しくはないはずだ。でも、なにかが変な気がして、緑川はむず痒さを感じてた。しかしそれが一緒にいる吹雪士郎のせいなのか、全くの別の理由なのかはさっぱり分からない。仕方ないから考えるのを止めた。
せっかく来たんだから!緑川は思った。何か美味しそうなものを食べよう!


「御注文をお伺いします」
「俺はこのパフェお願いします」
「僕はこの抹茶ソフトでー」
店員は「では後注文の確認をいたします」と言って注文を繰り返し読み上げると、奥に帰っていった。
「吹雪くん」
「なに?緑川くん」
「注文わざと?」
抹茶ソフト、と緑川が言うと吹雪は、えへへと笑って
「うん」
と答えた。緑川はぷくりと頬を膨らまして目線をちょっと右下にやった。
「ひどいや」
「ごめんね。でも食べたかったんだもの」
「さっきわざとって言ったじゃんか」
「うん。だから食べたかったのもあるし、緑川くんをいぢめたい気持ちもあった」
「なんだそれサイテー」
緑川が頬杖をつきながら不満げな顔をすると、吹雪は笑いながらごめんねーと言った。いやそれ謝る態度じゃないよね、という心の呟きは胸の内に留めておくことにした。


注文した品物が届くと二人は直ぐに目の前の甘味を口に運び始めた。そしてものの数分で完食すると二人して「あーあ」と溜め息を吐いたのだった。
「食べちゃったね」
「うん」
「どうしようか」
「そうだねー」
「緑川くんを食べればいいのかなあ」
「へ?」
「美味しそうだよねえ」
「ええ!?」
緑川が驚きに頬を赤く染めると、吹雪は「ほら、そんなところが可愛くて美味しそう」とへらりと笑うのだった。
「意味分かんないよ!」
「えー、そうかな?」
「俺の何処が美味しそうなんだよ」
「だって食べたいくらい可愛いんだもの」
「えー」
「だって僕、緑川くん好きだし」
「え」
「僕のこと嫌いなの?」
「いや」
「じゃあ好き?」
「いや、あの」
「ねえ、教えてよ」
吹雪は緑川に肉薄した。吹雪の垂れた目が緑川を見上げている。むう、と緑川は考える。今までの関係は友人以上恋人未満というやつだった。店で最初に感じた違和感。目の前の吹雪について。吹雪は好きさ。でもどういった感じで?
緑川はじっと吹雪を見つめて、自分の顔に手を当てて、そして自分の頬が赤く染まってることに気付いた。頬があつい。なんだ。本当はとっくにどう思ってるかなんて決まってたんじゃないか!
「吹雪」
「うん」
「俺吹雪が好きだ!」
吹雪はぱあっとした笑顔となって華やいだ。そして席から身を乗り出して、コツンと額を緑川の額に当てた。
「僕も緑川くんが好きだよ!」
と言うと吹雪は唇に息をふうっと吹き掛けた。柔らかにかかった空気がこそばゆくて、緑川は少し恥ずかしくなった。それではにかみながら
「やめろよー」
と言ったら吹雪はしぶしぶイスに座り直した。そうして
「緑川くん好きだよ」
ともう一度歌うように言ったのだった。


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