これが俗に言うビッチなのか。
基山ヒロトは、円堂がミスしたためにボールがぶつかって出来た右腕の痣をさすっている。いや、円堂のミスと言うのは間違っているかもしれない。円堂のミスは大したものではなかった。俺達なら簡単に避けることが出来るものだった。基山ヒロトはそれを敢えて避けなかったんだ。グラウンドでボールにぶつかり一瞬固まったこいつの顔が、喜びに歪められていたのを俺は確かに見た。こいつは常人とは一線を画する人間なんだとその時に再認識した。
基山ヒロトは左手で右腕に出来た紫の大きな斑点をそっと包み込み、恍惚とした表情をしている。そして灰色に近い指でそっと痣を押した。彼は大きく溜め息を吐いた。エクスタシーを感じているようだった。
「これ、円堂君が俺に付けたんだ」
「変態」
俺は基山ヒロトの言葉をそう一掃すると、こいつの髪に舌を這わした。基山ヒロトは「君に言われたくないなあ」と楽しそうに言った。
俺もこいつも、同じような人種で、相手でない特定の誰かが好きなんだけど、最近その「好き」という感情が麻痺してきて、本当に好きなのが誰だかわからなくなってきている。だから俺も基山ヒロトも逆上せた感覚を冷やして元に戻そうと、いうことを二人で話すのだけど、なかなか上手くいかず、挙げ句の果てには、俺が好きなのは基山で、基山が好きなのは俺じゃないかなんて変な錯覚を感じはじめてる最近だったりして二人して困っている。
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