夕暮れの日の光を窓越しに浴びながら灯りが付いておらずただ橙と金糸雀色に染まる部屋の中で一人たたずむ彼を美しい以外に形容できる語彙が俺にはありませんでした。
俺がドアを開けて「さくま」と言おうとしたその瞬間に彼は逆の時計回りで振り返りました。細い髪が弧を描くようにして彼の動きについてゆきました。
「なんだよ」
佐久間は口の端を上げて小石を水面に落とすように言いました。彼の薄い唇が綺麗な弧を描きながら開いて閉じて開きました。そして彼は瞬きを一度しました。長いまつげが橙に輝いています。
「なんだよ」
佐久間がもう一度言いました。今度も凛として筋の通った声音でした。俺は動けませんでした。俺が動いたらこの部屋の柔らかくしかしはりつめた空気が崩れるように思われたからです。でも佐久間にはそれで動かない俺はたいそうとぼけた奴に見えたのだろうと思います。
「なに固まってるんだよ」
目を細めて楽しそうに此方に歩いてくる彼は柔らかな橙に染まっていてとても綺麗です。俺は自分が彼を言い表すだけの語彙が無いのを憎みました。もし巧い言葉を知っていたなら俺はこの場の空気を壊さないような言葉を発せれるのに。
俺はゆっくりと佐久間の髪の毛をすくって光に透かしました。髪は白く眩しく光りました。俺はそしてそれをはらはらとこぼしました。そのゆったりとした髪の動きがあまりにも美しくて俺は言葉をこぼしました。
「佐久間」
掠れた声でした。空気が震えました。彼はなんだよと不思議そうにしました。
「きれいだ」
その瞬間佐久間の目がきらりと光って彼は綺麗に笑ってました。そしてお前もだろと言うと俺の頬に手を添えました。
嗚呼佐久間は俺を受け入れてくれるのだ。俺はぎこちなく笑うともう一度佐久間に綺麗だと言いました。
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