風介が急に抱き着いて来たから何かと思って訊ねたら案の定晴矢と喧嘩をしたらしいのでした。
「君たち仲いいね。羨ましいなあ」
と僕が笑うと風介の腕の力が強くなって少し苦しくなりました。脇腹に腕が食い込んでます。
「何処が仲良しなんだ。私はアイツなど嫌いだ」
「あ、そうなの。まあいいじゃないか」
「よくない」
風介はそう吐き捨てるように言うと僕の服に顔を埋めて何やらぶつぶつ呟き始めました。これは風介の機嫌が悪くなった証拠です。さて、ここで僕は困ってしまいます。風介は機嫌が悪くなると何を言っても聞かないのです。本当は喧嘩した点から全てを上手くフォローしてあげたいのですが、今の僕と風介では無理そうなのです。仕方無いので僕は黙って体を風介の好きにさせてやることにしました。もう成るように成れ、です。
風介は今僕を後ろから手を回して抱き締めています。ほっぺたを僕の背中にくっつけていて、かと思ったら首筋を急に舐めたりして、僕はたまに感じる妙な感覚にはほとほと弱ってしまいました。しかし離れろとも言えず、どうしたものかと思っても、どうにもならないのでした。
手元に本か何かがあれば良いのに、と思い始めた頃です。風介は突然僕の背中から剥がれると、僕の目の前に回り込んできました。僕はいきなり何だろうと思いました。
「照美、本当の私を見て」
「え?」
突然の言葉にフリーズしました。あまりにいきなりで、僕はなんと言えばいいのか分かりません。風介はそんな僕に矢継ぎに言葉を続けました。
「私は、きっと晴矢のことは嫌いではないし、本当は多分、友達ってものがが欲しいんだ。性格は冷たい振りをしてるけど、そんなことないんだ。それに、そういえばはっきり言ってなかったけど、私は照美が好きだ」
僕は言葉を失ってしまって、ぽかーんとしました。このタイミングでそんな告白されるなんて、誰が想像するでしょうか。確かに僕は風介が愛しいし、好きだと言ってくれたのは嬉しいです。でもこのタイミングで言うのは、なんと言うか、美しくない。だから、ちょっと嬉しくない。
僕は「うん。そっか」と少し冷めた返事をして口を閉じました。ちょっとした意地悪です。すると風介は普段は見せない寂しそうな顔をしました。そしてまた僕に抱き着くと、そのまま僕の唇を奪ったのでした。そして
「ずっと前から言おうと思っていたんだよ。私は照美が好きだ」
ともう一度言ったのでした。その風介の表情はとても切実なものでした。その切実さに、彼の言うずっと前は途方もない位前なんじゃないだろうか。僕らは生まれる前から繋がってた。此処で一緒になるのは宇宙の摂理なんだ。なんて、そんな馬鹿みたいなことを考えてしまって、だから僕はすまなく思ってしまったから優しく微笑むと、
「うん。僕もだよ」
と囁きました。僕の声が掠れて消えないかと声を発してから一瞬不安になりました。でも風介は目を見開いてからほっとしたような顔をすると「よかった」と肩を撫で下ろしたのでした。その仕草が年相応のもので、とても可愛らしかったから、僕が彼の頭を撫でたら
「……嬉しいけれど」
と不服そうな顔をされました。しかしその表情がまた可愛らしかったので(ほっぺたをぷくりと膨らましていたのです)僕はクスクスと笑ってしまいました。すると、彼はムスッとしてまた僕の唇に彼のを重ねました。ちゅ。そして唇を離なすと、何処か楽しそうに言いました。
「照美だけ楽しそうだから仕返しだ」
僕は怒られたにも関わらずまた笑ってしまいました。風介が可愛らしすぎるのです。そして風介も僕が笑うたびに頬だとか、額だとかに唇を落とすのです。そうやってお互いに触れ合いました。
さて、僕らが互いの手だとか髪の毛だとかを触り合ってると、何処からか晴矢がやってきて「おあついねえ」とのんびり喋ったのでした。そして軽く溜め息を吐いて何処かに行ってしまいました。風介が憎々しく「しね、チューリップ」と言った気がしましたが空耳でしょう。
視線が合いました。パチリと目線が合って、そして僕らはまたキスして触ってを再び始めたのでした。風介の肌の暖かさが心地好いです。僕は、僕らの周りだけ時間がゆっくり進めばいいのに、と夢見心地になりました。


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