-アフロディ君。
と呼んだら、なんだい。と落ち着いた声音がかえってきた。
-遅くなったけど、ありがとう。
そう僕が言ったらアフロディ君は驚いたことに、ピタリとフリーズした。でもそれはほんの数秒だけですぐに正常作動に戻った。そして、ああ、ダイアモンドダストとカオスの時のことだね。どういたしまして。と言った。
-どうしたの。
-何がだい。
-さっき。一瞬だけど固まったでしょう。
アフロディ君は痛いところを突かれたな、という笑顔をした。そしてでも、どうもしないよ。と言うと何時ものスマートな表情に戻ってしまった。
-嘘でしょう。アフロディ君。僕何かしたかな。
するとアフロディ君はまた困った笑顔になった。そうして言わなきゃ駄目かい。と首をかしげながら言った。駄目だよ。気になるもの。するとアフロディ君は下を向いてふう、と息を吐いた。
-僕はね、感謝されるのに慣れてないんだ。
-え?
-ありがとうって言われると、いや、そもそもそんなことあまり言われないのだけどね、びっくりしてしまうんだ。
-そうなんだ。
-変だろう?でもそうなんだ。何故だろうね…。今までの僕の傲った考え方がいけないのかな。それとも、僕が心から感謝などしたことが無いのがいけないのだろうか。それとも、僕が…親にそんな言葉を言って貰えなかったことだろうか。
アフロディ君はそう言って弱々しく笑った。要らぬことを言ってしまったね。忘れておくれよ。いいや。僕はけして忘れないよ。
-アフロディ君。君が今までありがとうって言ってもらえなかった分、僕がありがとうって言うね。だからアフロディ君もありがとうって言ってね。
アフロディ君はちょっぴり驚いた顔をしてから
-吹雪君。ありがとう。
と言って笑ってくれた。