その名のとおり緑の髪を高い位置で結んでいる彼は、国語辞典を読むのが趣味らしい。僕は国語辞典を読む人には会ったことが無かったので意外な趣味だと感じた。
「それ、面白いのかい」
「面白いよ」
頬杖をついて緑川君は分厚い辞典の細かい字をすらすら読んでいく。僕も隣で細かな字を眺めるがなかなか頭に入ってこない。
そう言えば昔、何かを読み間違えて、馬鹿だなこんなのも読めないのか。と笑われたことがあったのを思い出した。僕が7つ位の時だっただろうか。それから僕は恥ずかしい、という感覚をはっきりと持ち、他人より良くあるように努めるようになった気がする。
ぺらり。緑川君が辞書特有の薄い紙をめくった。次のページもやはりさらさらと読んでいく。緑川君はきっと僕みたいに読むことに関して辛い思い出はないのだろうね。
「ねえ。緑川君」
「なに。照美君」
「読むのって楽しいのかい?」
「楽しいけど?」
緑川君は不思議そうな顔をして言った。顔をあげたからポニーテールが揺れた。
「君は嫌いなのか?」
緑川君にそう訊かれて、そうだよ。と答えようと思ったのだけれども、緑川君が残念な顔をするのは見たくは無かった。だから「きっと嫌いだと思う。でも、君が好きなら僕も好きになれるように努めるよ」と微笑んで言ったら、緑川君も微笑んだ。そして緑川君は「ありがとう」と僕に向かって言った。ポニーテールが揺れた。僕はそういわれて嬉しかった。顔がほころぶくらい。だから頑張って好きになってみようと思った。
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