「結局風丸君は、かまって欲しいだけなんでしょ。わかったから自分が一番不幸みたいな顏するの止めてくれないかな。不幸な自分に酔う人間って嫌いなんだよね」
そう言ったら風丸君は、沈んだ顔をさらに歪めて黙った。今僕は、はじめてそんな風丸君に途方もなく苛つく、という気持ちを感じた。なんだよ。風丸君の馬鹿野郎。
僕は君の話を聞いてあげたのに、黙りこくるなんて。それはあんまりじゃないか。
「なに。人のこと散々嫌いだ嫌いだって言っておいて自分が言われるのは嫌なの?身勝手過ぎるよ」
風丸君はまだ黙ってる。
僕は語気を荒くする。
「何とか言いなよ。僕はずっと相手してあげたのにさ」
風丸君はまだ黙ってる。
僕は更にイライライライラ。
「風丸君聞いてる?ねえ?」
風丸君はまだ…、
「…おれ、よくわからないんだ。けっきょくなにいいたかったのか。あのじかんにいみなんてあったのか。じぶんでも」
風丸君がうつ向いたまま言った。
…なんだよそれ。身勝手過ぎるよ。あんなに僕は、考えて答えて。少し腹はたったけどね、風丸君だったから付き合って。なのに、それが無意味だなんて。そんなのって!
悔しくなったから風丸君の頬を一回叩いてやった。
バシッと乾いた音が部屋に響いた。青い髪が反動で揺れている。手が痛い。驚いた顔をしたかと思うと、風丸君は叩かれた方の頬に手を当てて何故か微笑した。
「さっきさ、俺、吹雪が嫌いって言ったけどそれ取り消してくれ。すきだ」
風丸君の赤くなった左の頬。真摯に光る紅い目。頬をひっぱたいたのに彼は何故か僕を肯定する。なんだよ、嫌いじゃなかったのかよ。
「なにそれ。なんで叩かれたあとにそんなこと言うの。風丸君ってマゾヒストなの」
「わかんない。でも、構ってくれるから吹雪は、好きだ」
「なにその理由。むかつくよ」
そういい放ったら、風丸君は真っ直ぐ僕の目を見て言った。
「ごめん」
その一言をあまりに綺麗に笑って言うものだから、僕はそれ以上何も言えなくなってしまった。そして僕が黙っていると、風丸君はそれを否定と取ったようで、泣きそうな困った顔をしてしまった。そしてもう一度小さく、でもはっきりと、
「ごめん吹雪。俺、吹雪が好きだよ」
と言った。僕は他にいい答えなんか思い付かなかったから素直に、
「うん。僕も風丸君が好きだよ」
と言った。

結局今までしたことはなんだったんだろうなあ。風丸君は小難しいことは何も考えてなくて、やっぱり皆のことは好きで、嫌いな振りをしていただけなのかなあ。
そう訊ねたら風丸君は
「自分でもわかんないけど、ただ単になんかそんな気分だったんだ。そう、無条件に憂鬱な気分だったんだよ」
と言った。
そうだね。メランコリィはそんなものかもしれないね。そう答えて僕は風丸君を抱きしめた。可憐な憂鬱の香りがした。
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