吹雪がオレンジ・ジュースを飲み干しキャップを閉めると、急に風丸が関を切ったように言い始めた。


俺は良い人なんかじゃないんだ。全くの虚実なんだ。それは嘘の俺なんだ。いつも振りをしてるだけなんだ。そうやって俺はいい人を作ってたんだ。皆が知ってる俺は全部紛い物なんだ。本当の俺は、そう、みんな嫌いなんだ。さっき言ったみたいに、俺よりできる奴が嫌いなんだ。大嫌いなんだ。それなのに俺はそいつらに好かれたくていい人になってたんだ。そうさ。みんな俺の表面上の優しさを求めてるのさ。いい人をやっている俺が好きなのさ。俺の本質に誰も迫ろうとはしないんだ。いや、俺が迫らせないのかも。まあどっちにしろ俺は本当はいい人じゃないし、皆を心から応援してないし、要するに最悪な奴なんだよな。美味しい汁だけすすっている悪い奴なんだ。俺は酷い奴なんだ。


吹雪はそれを黙って聞いてから言った。


うん。でもね。人間なんてそんなもんだよ。核なんて見ようともしないで、美味しい部分だけありがたがるんだ。だから、君の偽の優しさは皆からすれば気楽に受け取れて、だからありがたくて、そこが風丸君の優しさなんだよ。
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