リッパーストリートインスピ






(♀夢/MHA/爆豪勝己/notヒーロー志望/リッパーストリート参考。19世紀ロンドンっぽい雰囲気で治安はよくない//)


勝己は刑事。


闘技場の賭け。八百長犯罪の潜入中。

地下レス。(ふじみのちょんぼ参考)


慣れていないと一眼でわかった。
物珍しそうに周囲に目を配り、男どもの野次にビクと跳ね上がり、メインの殴り合いには不快な顔を見せる。年頃の娘が一体何しに来たのだと眺めていたのは、勝己だけではなかった。

上流階級の見物人は珍しくないが、女一人はそういない。



「嫌! やめて離して!」

「暴れんな! おい、そっち押さえろ」

「誰かぁ!」





「……助けてなんて頼んでないわ」

「ああ!? 礼の一つも言えねえのか!」

「あなたのような卑しい人に借りを作りたくないの。早くどっか行って」


女は胸を抱いて背中を向けた。


「ンなカッコで座ってたら、次待ってるみてぇなもんだぞ。余計な世話したか? ああ?」

「あなたがいなくなってからよ」

「ここで直せ。もう目立ってんだからどこ行っても同じだよ」

服を直す。その間胸元がはだける。

「テメェみてぇなのは場違いだ。とっとと失せろ」

「私の自由よ」

「体売りてぇなら娼館紹介するぜ」

バチン!

「穢らわしい!」

「犯罪者しかいねえ街に倫理でも求めてやがんのか?」



notは養子。




「おい」

「……何か御用?」

「来んなっつったろ。下町の言葉はわかんねぇか?」

「あなたに関係ない」



見つかりそうになり、路地裏に連れ込んで恋人のフリで腰を抱く。

「ちょっ……!」

「黙れ。大人しくしてろ」

腰や背中を撫でる。
恥じらい。



「その気にさせたかよ」

「まさか」




「ありがとう。でももう結構よ」




「下町の人間は慣れてるのね」

「あ?」

「ああやって女性に迫ること」

「迫ったうちに入んねえよ。挨拶だあんなん」

「そう」



勝己は潜入中の警察。腕っ節が強い。



「格好変えても雰囲気でわかんだよ」

「……あなた、この街には詳しいわよね」

「てめぇよりはな」

「この辺りに休める場所はある?」

「てめぇ……言葉選べや」

「え?」

「そんな何も知らねえウサギみてぇな根性でよくこの街来やがったな」

「何に怒ってるの? ……ここではお茶を出すお店って危ない場所なの? 密売の温床とか?」

「……」



〈ディラノ〉


「ありがとう。良い店ね」

「飲んだら帰れ」

「この街に、撮影スタジオみたいなところはある?」

「あ?」


「人を探してるの。どこかの劇場で作家をしてるって人よ」

「ンなもんそこらへんの小屋当たってきゃ見つかんだろ」

「もう行った。普段はフィルムを作ってる人だって聞いたわ」

「フィルムぅ?」

「連続写真よ」

滅多にお目にかかれるものではない。

「表には出ない作品だって。それ以上は教えてもらえなかった。……でも表に出せない作品なんておおよそ想像がつくわ。だからあんなアングラなところに行ったのよ。何か知ってる人がいるんじゃないかって。何か知らない?」

「なんでそんなやつ探してんだ」

「……」



「知らねぇな。とにかくここはテメェが思ってるより易しかねえ。探し物が見つかんねえならとっとと失せろ」

「あなたにはあの賭場に行けば会えるの?」

「来んなっつってんだよ。ガキのお守りは趣味じゃねえ」

「……お父さんかもしれないの」



「お金がなくて、私を養子に出した人。その後、家を引き払って姿を消した。ここにいるって聞いたの。一度離れたけど、父親だもの……、生きて会えるなら、多少の危険は顧みないわ。私なりに覚悟して来てるの」


「やっぱてめぇにゃ合わねえよ、この街は」

番号

「なんかありゃここに電話しろ。運がよけりゃ出る。俺以外が出たら〈ディラノ〉にいるって伝言しろ。この店だ」

「あなたの番号?」

「じゃなきゃなんだっつーんだよ」

「ありがとう。他の人が出たら、あなたのことなんて伝えたらいいの?」

「勝己」

「そう。勝己ね。覚えておくわ。私は……」

「いらねえ。俺を〈ディラノ〉に呼びつける女はてめぇだけだ」

「そう」







「あ、かっちゃん。さっき電話が入ってたよ。『ディラノ』にいるって、女の人から」

「……ちっ」





 伝言を受けた勝己が〈ディラノ〉に出ていく。そんなことが幾度か繰り返された。頬杖をついた上鳴は勝己を見送った出入り口の扉を見つめたままぽつり呟いた。

「なぁ。なーんか最近爆豪宛ての電話ちょくちょくあるよな」

「しかも女。待ち合わせは毎回同じ場所。不倫なら即バレのパターン」上鳴の横にいた瀬呂が頷く。
 




「ふーん、ああいうタイプね」

「結構カワイイ系じゃね。娼婦っぽくはねえな」

「確かに。キレイっつか、汚れたことなさそうっつーか。この辺より教会とか学校が似合いそうな感じだな。小屋の子かね?」

「つっても最近はあの辺も叩くほど出るぜ。特に女子供絡みの」

「そんな子が爆豪に電話ねぇ」





「」


「情報提供者だ。あの女は石川里穹を追ってる。俺らにも利があんだよ」

「マジ? あんな可愛い子が、なんでそんなヤバい奴追ってんの?」

「知るかよ。俺の潜入先にまで来る女だ。ちったぁ頭が回るし度胸がねえわけでもねえ。話した感じは臭くもねえ。女なら餌にもなんだろ」

「うわちゃ、意外と危ないことすんのね。だからウチに電話入れさせてんの?」

「おまえそういう話はちゃんと共有しとけって」

「だから箱の番号教えたんだろうが!」

「はい先生。僕は私用で番号教えたんだと思いました!」

「死ねや!」




「つーか、ちょうどいいわ。ツラかせ」

娼館

「ここに石川のスタジオに行った女がいるかもしれねえ。二十歳前後の女、青い目、髪はブロンド。」





『娼館だったら女の方が入りやすいだろうが。こっちは相手した女からしか話聞けねえんだぞ』
『……女は噂話が好きな生き物よ。広まってるかもしれないわ』
『口の軽ぃ莫迦な女の相手を俺にしろってか』


『だって、そんないきなり……。男の人の相手なんてしたことないもの……。あなたがいなかったら、そうするしかなかったけど。女に迫るのなんて挨拶なんでしょう?』

『テメェが娼婦として入らねえなら、見返りはもらうぞ』
『お金なら用意したわ』
『てめぇが用意する端金なんざいらねえよ。俺がその娼館でなんか掴んだら、テメェはもうこの街に来んな』
『また遠ざけようとするの。私がその条件を飲むと思う?』
『要はてめぇの父親を見つけりゃいいんだろうが』

『てめぇみてえな女がここにいると、俺の仕事が増えんだよ』

『あなたの仕事、地下の選手でしょ』
『そこは辞めたんだよ。また襲われたくなきゃてめぇも寄り付くな。話は終ぇだ。夜になる前にとっとと失せろ』



「てめぇら、変に接触して警戒心持たせんじゃねえぞ」




「爆豪。娼館に戻ってない女の子がいるって」

馬車の目撃証言

「最近この辺をうろついてる小綺麗な女が乗ってた」



「だから来んなっつったんだよ!」
「お父さんがいたの。この目で見た」
「確かか?」
「お父さんが逃がしてくれた。私……何も知らないで莫迦みたいに近づいて……お父さんが死んじゃうかも」
「泣いてる場合じゃねえんだよ! 確りしろクソ女!」



「おまえを買い戻したかった」

「ごめんな」


「いい」

「会いたいって思ってたのが私だけじゃなかった……いいの。だから」