深夜の電話×爆豪勝己






(♀夢/英雄学/爆豪勝己/notヒーロー志望/匿名リクエストBOXより「深夜の電話×爆豪勝己」)



 深夜。

 通知音で意識が浮上した。枕元に置いていた端末画面は淡く光っている。窓の外はまだ闇が深い。
 睡魔はまだ瞼を重くしていたが、勝己は端末を取った。起こされた苛立ちを自覚しながら誰だよと画面を見る。それと同時に時間を確認する。

 2:08。
 〈起きてる?〉

 ◎からだった。
 舌打ちをして、メッセージの画面を開き文字を打つ。

 〈寝てたわ〉

 送信と同時に既読がついた。向こうはずっと画面を開いているようだ。間も無く返信が来た。

 〈起こしてごめん。おやすみ〉
「ああ…?」

 しおらしく引き下がるということは、大した用ではないのだろう。だがわざわざ連絡を寄越す理由に見当がつかず、数秒考えた後勝己は通話発信をタップした。
 コール一回の後、◎は出た。

『勝己?』
「てめぇ何時だと思ってんだよ」

 寝起きの声は低くもったりとしていた。話すのも面倒だが文字を打つよりは手っ取り早い。

『二時。ごめんね。寝てよかったのに』
「だったら訳わかんねぇ連絡すんな。なんだよ」
『別に大した用じゃないんだけど、星が綺麗だったから』
「…星ィ?」

 言われて、勝己は寝返りをうって窓に顔を向けた。カーテンの隙間から外の灯りがわずかに部屋に入っているのが見えるだけだった。億劫だったが、まだ寝足りない体を起こしてベッドを下りた。
 シャっと音を立ててカーテンを開き、窓を開けた。

「…お」

『綺麗でしょう?』
「…おう」

 音が吸い込まれるように静かで、小さな光の点は闇夜の中に散りばめられている。人が多くいる場所とは思えぬほど本当によく見える。見上げている空は全く代わり映えしないのに、何故かもう少しだけ見ていたい。その欲求がずっと続いて終わらなかった。

「このバカ」
『ん?」
「山登りたくなったろーが」
『ふふ、いいわね』


『綺麗だったから誰かと見たくて』
「ダチいねえ奴かよ」
『勝己と見たかった』

『勝己が一番好きだもの』

「…バーカ」