【400字】三割増しに甘いチョコレート






(♀夢/英雄学/爆豪勝己/notヒーロー志望)


 触れた唇が気持ちよかったから。
 たった一回では足りなかったから。
 一番最後のポッキーを両端から互いに食べ進めて、触れた後はぱっきりと潔く折った。食欲だけのポッキーゲーム。唇と歯の間でまだ居座っている短いそれを勝己は唇で寄せて己の口内へ収めた。唇を滑り抜けていく感触に、取られた、とみみっちいことを思う。その後、もう一回したいなと食欲とは別の小さい欲。
「もう一回」
「今ので最後だろ」
 まさかリピートしたくなるとは思っていなかったから最後の一本になるまで普通に食べてしまった。少し悩んだ後、◎はキッチンの菓子入れから小粒のチョコレートを持って来て口に含めた。元いた場所に戻ると予告無しに勝己にキスをして、口を開くように唇で促すと勝己は薄く唇を開く。唾液に濡れたチョコレートを送り出すと、勝己もいくらか溶かした後に◎の口の中に戻した。少しずつ形を崩してなくなるまでの、微睡んだ甘いキス。