分散阻止。






(♀夢/英雄学/爆豪勝己/notヒーロー志望/成人後)

(※notヒーロー志望が一人暮らしで猫を飼ったら)





「カツキおいで、ご飯よ」

呼ばれたと思って顔を上げれば、素早く視界を通り過ぎたのはいつの間にやら飼っていた薄い金の毛並みの猫。自分を呼んだのではないとわかると、勝己は舌打ちした。

「おい。なんで俺の名前つけてんだ紛らわしいわ」

猫の前に皿を置いた◎はその場で勝己に目を向けた。

「呼びやすいからかしら」
「ザケんな。つけ直せや」
「ダメ?もうカツキで定着しちゃったのよ」
「殺すぞ」

猫の前でしゃがみこんだまま、うーんと考えた。つけ直せと言われても、他にいい名前が思いつかなかったからカツキにしたのだ。

「でも、この子勝己と毛の色が似てるの。勝己と一緒にいるみたいでなんだか落ち着くのよ。勝己が猫になったみたいでしょう?」

勝己は猫に視線を落とした。確かに毛の色は似ている。

「四足歩行と一緒にすんな殺すぞ」

声に刺々しさが含まれていく。◎の足元で食事している猫にイライラした。

勝己は俺なんだよ。俺の方がこいつと付き合い長えんだよ。生まれた時から同じ飯食ってんだよ。ぽっと出の話もできねぇクソ猫がこいつんちに居座ってんじゃねえよ。
云々。


「おいこっち来い」


イラついた声のまま◎を呼んだ。◎は腰を上げて勝己の隣に移動するとそのまま座った。

「何?」

腕を掴み引き寄せ◎を抱え込むとそのまま床に倒れた。腕の中で◎は「わ」と声を漏らす。勝己の上に乗る。抱き締める腕の力はぎゅっと強くなる。

「勝己?」
「勝手に俺に並ぶやつ作ってんじゃねぇよカス」
「勝己が一番よ」
「たりめーだろが」

俺とこいつの間に入るやつは猫だろーがムカつくんだよ。
声にはしなかったが、勝己の思考を察したようにふふ、と甘い笑い声が漏れる。◎は体を起こして、勝己の顔を見下ろした。

「好きよ、勝己」
「当然だろ。じゃねぇと殺す」

顔の位置を合わせると、◎は唇を合わせた。
勝己の腕は◎の身体を撫で、キスと、その合間に零す小さな笑い声。

睦み合いの少し遠くでは、猫が構って欲しそうにニャアと鳴いた。