お菓子が足りないから悪戯しますね。
(♀夢/英雄学/爆豪勝己/notヒーロー志望/ハロウィン)
課外授業でハロウィン行事なんかなければ、仮装なんかしなかったし、巡回の子供に飴を配ることもしなかった。何故提供する側も仮装するのか。
「トリックオアトリート」
「…なんで来やがった」
「楽しそうだったから」
「クソが」
極め付けには生まれた時からの幼馴染まで冷やかしに来た。
全身真っ黒のいかにも魔女という風貌に三角帽子を被って杖まで持っている。
「オールマイトは歓迎してくれたわよ。写真撮ってもいい?」
「殺すぞ。オラ、とっとと他行け」
ランタン型のバケツに飴玉を放り投げるとどっかりと長椅子に腰掛けた。勝己の持ち場には子供が寄り付かず、始終休憩時間だ。
「飴玉一つだけ?小学生ともらう数同じなの?」
「ガキの遊びに参加してんのてめぇだろ。文句あんなら在庫全部持ってけ」
「うーん、それもそうね。でも足りないからイタズラしてもいい?」
「ああ!?飴やったろーが!」
「フルーツの飴苦手なのよ。舐め終わっても口の中に残る感じがして」
「んなもん俺が知るか!」
「いいじゃない。暇でしょう?この辺りだけ人いないもの」
遊んでほしいという気配を隠さず、◎は微笑んで勝己の同意を待った。確かに暇ではある。それに◎で何をするのか想像つかず、興味も湧いた。
「…俺になんかできるもんならやってみろや」
「ふふ、じゃあ遠慮なく」
勝己の頬を両手で包むと、少し背伸びして◎は軽くキスをした。唇はすぐに離れる。驚きはなかった。交際関係ではないが、キスくらいしたことがある。一度だけだが。
「…んだよ終わりか?」
「うん」
「はっ、呆気ねぇ。こんなもんかよ」
「他に思いつかなかったのよ」
所詮優等生の考えるイタズラなんてこの程度か。鼻で笑ったが、◎は満足そうに勝己から離れた。
「それじゃあ引き続き頑張ってね。狼さん」
「とっとと失せろ」
そんなやりとりの後◎は立ち去った。
その後は意外に親子連れや同年代の訪問者があり、面倒に思いながらも対応した。
終了の時刻となり撤収作業を行ってる際、クラスメイトが動揺した様子で勝己の顔を見ているのに気付いた。
「ああ!?何見てんだコラ!!」
「いや…」
近場にいた尾白が目を逸らす。何かに気付いているが言うまいとしているようだった。後ろの方では瀬呂がニヤニヤしている。
イライラした。なんかあるなら言えよと。
遠くの方で作業をしていた切島が様子を察知してやって来た時、勝己の顔を見た途端言った。
「はー!?爆豪お前なんだその顔!」
「だァからなんだっつってんだよ!」
「鏡見てみろって!」
ぎゃはは!と笑う切島に瀬呂も堪えていた笑いを声に出した。
笑うな!と言い捨てて、勝己はトイレに向かった。顔?仮装のメイクなんてした覚えはない。
鏡を見た瞬間、目を疑った。
「あああっ!!?」
右頬に、ハート形に赤いペイントが塗られていた。
「ンだこれ!いつ…!」
ハッと思い出す。頬に触れたのは◎だけだ。指で拭ったが滲むだけで落ちない。
即行で携帯を出して◎に発信した。
『はい』
「おいクソ◎!てめェの仕業だろ!落ちねぇぞどうすんだコレ!」
『今気づいたのね。綺麗に残せたのよ』
「うっせぇ!フザけたことしやがって殺すぞ!」
『あはははっ』
「笑ってんじゃねえ!」
至極愉快そうに笑う◎は珍しかったが、それどころではない。一体何人にこんな情けない姿を見られたと思っている。
『ふふっ…クレンジングで落ちるわ。飯田くんがメイクしてたから持ってるんじゃないかしら』
「てめェ覚えてろよ…このままじゃ済まさねえからな」
『痛くしないでね』
「知るか!死ぬ覚悟しとけや!」
【終わり】
(あとがき)
この後勝己は「クソが…ぶっ殺す」と文句言いながらハートを落としました。
ハートにするかキスマークにするか悩みましたが、キスマークは生々しい感じがしたのでハートにしました。
【引用元】
『【ハロウィンのnotヒーロー志望。】攻めに飴玉を一つ貰ったのにそれじゃ足りないと文句を言う受けを妄想しましょう。
https://shindanmaker.com/278390 』