明日はもう君がいない。
(♀夢/英雄学/爆豪勝己/轟焦凍/notヒーロー志望/成人後/失恋)
(※もしもnotヒーロー志望が轟と付き合ってたらif)
付き合い始めたのが二年前で、同棲するっつって荷物をまとめ始めたのが一月前で、本と服くらいしか詰めてねえ段ボールが外に運び出されてんのを見てんのが今。
「もうあんまり会えなくなっちゃうわね」
いつも通り。未練の欠片もねえ笑顔。声は少し沈んでる。
少し寂しそうに眉尻を下げてても、どうせ◎は行くのを止めねえ。わかってんだ。
俺のもんだと思ってずっと横にいたのに、知らねえ間にこいつは半分野郎に傾いて行きやがった。
俺らはお互いに死ぬまでずっと同じこと考えてると思ってたのに、こいつだけそうじゃなくなった。
「会えんだろ。会おうと思えば」
行くな。
ずっと胸の奥にあるクソみてぇな怯えに繋がれて、それは声に出来なかった。こいつが平気にしてんのに、俺が平気じゃねえなんて、そんなんガラじゃねぇ。俺らはこれでいいんだ。これが俺らだ。
たった一言言えりゃあ、こんな思いしなかったかもしれねえ。
それをわかってても、俺がそれを言うのは嫌だった。
「そうね。でも、できるだけ勝己には会わないわ」
また。確実に一歩こいつが離れる。
◎が半分野郎に近づく度、俺からどんどん離れて行く。やめろ。行くな。
「やっぱり、私は勝己が一番好きだから、轟くんより勝己を優先したくなると思う」
「…きっかりどっちかにしろや。てめぇがンなめんどくせぇこと言うから半分野郎がうぜぇんだよ」
なんで。
(だったら俺にしろよ)
声になるのは口に馴染んだ憎まれ口ばっかりで、思ってることは一つも出ねえ。それを伝える言葉を知らねえみたいに。
「じゃ」
「…おう」
トラックに同乗して、ドアが閉まる音がやけに響いた。発進してどんどん離れて、角を曲がって見えなくなった。
…もう、会えねえ。
「―――◎…」
ガキの頃から、てめぇが好きだった。