生存願望。
(アスレイ/パラレル/死)
「貴方を守れるなら、この身が滅ぶことも恐ろしくはない」
君はまるで、生きることへの執着がないかのように俺にそう跪く。それはずっと陳腐な常套句だと思っていた。どうせそんなことは本当にならない。誰だって我が身は可愛いし、本当に君が死んだら、その後俺を守ることができないから。だけどふと考えた。もしそれが本当になってしまったら、と。その世界に君はいなくて、俺は一人取り残されてしまうことになるんだ。それ以上に恐ろしいことがあるだろうか。
レイ。俺はできることなら死にたくないよ。だけど死ぬことよりも嫌なことだってあるんだ。君がいない場所なんて、どんな奈落よりも酷な場所だ。どうか俺にそんなひどい場所へ追いやらないでくれ。
「俺を守って君が滅んでしまうなら、守る必要なんてない。そういうことは自分の身を守れる実力を身につけてから言ってくれ」
優しい貴方は、俺の身を案じてそう言ってくれた。嬉しいよりも、自身の立場を自覚してほしいと、そう思った。俺の代わりはいくらでもいる。貴方の代わりはいない。俺の言葉も、義務も、道理に適っているんだ。それ故に貴方を特別な感情で慕っていることを決して言葉にできなかったけれど。
だけど、貴方がいてくれるならば、本当に俺自身がどうなろうとよかったんだ。
ああ、アスラン。俺に身を守れと言った貴方が、俺を守って死んでしまうなんてあんまりじゃないか。貴方が思うほど俺は強くない。貴方がいないこの場所はあまりにも広くて、広すぎてどこにも行けなくて、俺はただ立ち尽くすしかできない。
アスラン。
「…貴方がずっと好きでした」
やっと言えたこの言葉も、もう貴方には届かない。