主観.5









(BL/種が運ぶ命/アスラン×レイ/前サイトから転載)



俺、レイが思ってるほど何も知らないわけじゃないよ。

「俺が撃てば良かったな。…優しすぎる、お前」
そう言って反対側のベッドに入るレイを俺は見つめた。

なんでお前は平気なんだよ。
俺よりも悲しいくせに。
俺よりも苦しいくせに。
なんで平気なふりするんだよ。

―――明日の夜は、俺の部屋においで…レイ―――

なんで裏切ったんだよ…。
アスラン。


偶然だった。たまたま通りかかった消灯したレクルームで、アスランとレイを見た。二人は話をするには不自然なほど寄り添っていて、上司と部下として其処にいるのではないと理解するのに時間はかからなかった。

二人の影は重なっていたのだ。

何をしているのかは一目瞭然だった。俺はその光景に驚きながらも、音を立てないように数歩後退し、入り口から十分離れてからレクルームに背を向けて其処から逃げた。男同士で、なんて偏見に至る前に、ショックを受けていた。

自信があったのだ。少なくともこの艦の中では自分がレイと一番親しい間柄なのだと。それがいきなりやって来たオーブの人間にあっさり追い越されたと知ったことに、俺は確かに傷ついた。
恋愛の対象としてレイを見てたわけじゃない。ただ、口数は少ないけど優しくて、俺のことを考えてくれるレイがお兄さんみたいだと思っていた。家族を失った傷が、レイという癒しを求めていた。

嫉妬ではない。俺はレイに恋しているわけじゃないんだから。
レイがアスランを好きなら、一緒になってくれれば良い。レイが幸せだったら、俺もきっと喜べると思った。

なのに。


―――『アスランがグフを奪って逃走した!追撃に出る!―――命令は撃墜だぞ』

いつもの、軍人としての口調で。


―――『議長やレイの言うことは確かに正しく、心地よく聞こえるかもしれない。だが彼らの言葉はやがて世界のすべてを殺す!』

そんな真面目な、厳しい声で。


―――『敵なんだぞ!撃たなくてはならないんだ、俺たちは!!』

どんな気持ちで…。


一方は殺そうとして追い掛けて、一方は相手のすべてを否定して。
なんでだよ。好き合ってるんじゃないのかよ。
お互いがお互いに、惹かれ合ってるはずなのに。でなければ、レイがあんな優しい表情をするはずがないんだ。好き合ってなかったら、キスなんてするはずがないんだ。

裏切り者。アンタなんか死んで正解だよ。
でも。


もし生きてたら、今度はずっとレイの隣にいて。
それがきっと、レイの幸せなんだから。



死んだ人と会えることは絶対にないことを、俺は痛いほどに知っていたのに。