主観.1
(BL/種が運ぶ命/アスラン×レイ/前サイトから転載)
好意を向けられている自覚はある。
アスランのその気持ちは素直に嬉しかったし、自分の中の彼への好意にも自信を持てた。
身体を重ねる約束も喜んで受け入れたし、彼は優しかった。
しかし、人は賢い生き物だ。
賢さとは他より多く知識を持ち、持つ力を駆使して自分の思うままに事を運ぶということ。
そのためには、嘘が当然のように現れる。
所詮、他人など自分の利益になるか否か。
要はどれが騙されていい嘘で、どれが不利な嘘であるか。
要は対象がどれほど自分へその身を捧げるか。
恋というのは、その自己犠牲の最たる愚かな感情。
恋が成す盲目は、相手の根底を見失わせ、自分の利益すらも総て見失わせる。
相手の利益となる、扱いやすい都合の良い物へと変わり果てる。
その都合の良い物が、今のアスランにとっての俺でも不思議ではないのだ。
生きていくためには他人を物として扱い続ける。
利益にならなくなれば捨てて、より大きな利益を求める。
好きなどという曖昧な言葉など信じられない。
ただ自分の中にある彼への好意が、その嘘に気付きながらも騙されている。
だって未来は誰にも約束出来なくて、決められない。
アスランの俺への好意がいつ消沈してもまったく可笑しくはなく、むしろ当たり前なのだ。
だってアスランにはキラ・ヤマトがいる。
どうせ離れていってしまうんだろう。
「明日の夜も、俺の部屋においで」
嗚呼、でも。
笑ってそう言うアスランの嘘が不確定な明日を確かなものにして、俺は安心させる。
騙されていい嘘だと思い込ませる。
明日もまだミネルバにいてくれる。
性人形として見られていても、かまわない。
物として思われていても、かまわない。
だって俺もアスランを物として見ているんだ。
一時的な安らぎをくれる、生きている上の通過点にある、物。
所詮人は、感情と言う面倒な心を持ち合わせた、物でしかない。
そう思わなければ、愛なんて信じられるわけがない。