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「あ、こんばんは。」
返事を返すと、その銀髪は笑みを一層強めた。
そして、その人は言う。
「アンタが、『朝比奈ミナト』サンで合ってるか?」
「え、そうですけど。」
何でこの人は私の名前を知ってるんだろう。
そんな私の疑問をぶつける暇も無く、その人は更に続ける。
「朝比奈ミナト。16歳。女。現在、高校に通いながらも父から受け継いだ孤児院を管理している。中学では陸上部に所属。恋人は居らず、スリーサイズは………」
「あ、あの!
なんで、私の事をそんなに知ってるんですか?」
危うくスリーサイズまで暴露されそうになり、慌てて言葉を切る。
そして思っていた事を言えば、銀髪の人は笑みを歪ませた。
「そうか、アンタが『朝比奈ミナト』で間違い無いんだな?」
はい、と返事すると、その人はポケットに手を突っ込んだ。
「じゃあ、『朝比奈ミナト』サン。
悪いが、アンタには死んで貰う。」
チャキ。
そう音を鳴らした銀髪の人の手の中には、刃渡り20cmぐらいのナイフが光っていて。
突然の行為に頭が付いていかずボーっと立ち尽くしていると、その人は声を出さず笑った。
「俺には何の恨みも無いが、まぁコレが運命だとでも思って諦めな、お嬢さん。」
その人はこちらに向かって歩き出す。
それでやっと、足に血が巡り始めた。
髪の隙間からチラッと見えたその人の目を見て、本能的に理解する。
この人は、目が本気だ。
私、死、ぬの、?
―――殺されるっ!!?
バッと回れ右をして、一目散に走り出す私。
後ろで、足音がした。
「逃げても無駄だぜ、お嬢さん。」
訳の分からない、私の命を賭けた追いかけっこの始まりだった。
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