つまりは好きだって事
2012/02/14 03:19

□ディエジョニ(現パロ)

「ジョニィ・ジョースターッ!!!」

突然大きな声が廊下に響き渡り、ジョニィの周りにいた生徒は皆どこかへ行ってしまった。
名前を呼んだ主が誰なのかはもうわかっている。
ジョニィが嫌嫌振り向くと、やはりディエゴ・ブランドーが立っていた。

「フン、久しぶりだなジョニィ」

「…何か用?」

「用がなければ話しかけてはいけないのか?」

「…何度も言うけど、ぼくは君が嫌いだ…誰だって嫌いな奴に話しかけられていい気分にはならないだろ」

だからぼくに関わるな、と言い残し去ろうとすると、車椅子のグリップをぐっと引かれた。
突然の事に驚いてジョニィは短い悲鳴をあげる。
ディエゴは、おっとすまない、と謝りながらにやにやと笑っていた。

(ああ、むかつく奴!)

こうやってすぐに人を見下したような態度をとるところがジョニィは大嫌いだった。
足が動いたら今すぐジャイロのもとへ行くのに、そう考えてハンドリムをぎゅっと握る。

「そう嫌うな、たまには世間話でもしようじゃないか…車椅子押してやるよ」

訝しげに見上げると、ディエゴはわざとらしく笑った。
階段から突き落とすつもりなのだろうか、とジョニィは思ったが、どちらにせよ一人で階段を降りることは出来ない。
玄関に着くまでだ、そう言ってジョニィはハンドリムを離した。

「…そういえば、最近ジャイロ・ツェペリと仲が良いみたいだな、君」

「…それがなに?」

「いや、ずっと独りだったから珍しいなと思ってね」

「……何が言いたい」

クツクツと喉で笑って、知らないのか、とディエゴは続ける。
いつの間にか階段の上まで来ていた。

「だから、何なんだよ」

「…お前とジャイロが出来てるんじゃあないかって噂だよ」

ディエゴはそう言ってジョニィを抱きあげる。
体が宙に浮き、思わずディエゴに抱きついた。
すぐに離れようとしたが、暴れるとこのまま落とすぞ、と脅される。
仕方なくジョニィは大人しく掴まったままでいた。

階段を降りる間、色んな生徒や、教師が振り向いて二人を見る。
もともとライバルだった二人が、一緒にいたら見ないわけがない。
それに加えて、ジョニィがディエゴに階段を降りるのを手伝ってもらっているのだ。
足を壊してからは注目されることを避けてきたジョニィは、そのまま俯いた。

「…さっきの続きだが…本当にジャイロと付き合ってるのか?」

「…っばかじゃないの!ジャイロは友達で、ぼくの一番の親友だ!」

「ふむ…つまりあの噂はデタラメだったというわけか」

「あたりまえだろ!!」

本当に付き合ってるのかと思っていた、と呟くディエゴにジョニィは怒鳴った。
と、同時に床に下ろされる。
ディエゴは、車椅子を取ってくる、とそのまま階段を登っていった。

(…噂を流した奴はばかだ)

確かにジャイロはジョニィにとって特別な存在で、大好きな相棒だ。
だが、それは恋愛感情とかそういうものではない。
二人は恋人よりも強い絆で結ばれている。

ジャイロに会いたい、そう思ったとき、ガシャンと車椅子が隣に置かれた。
ディエゴがジョニィを丁寧に車椅子の上へと乗せる。
いつもは顔も見たくないと無視していたが、改めて見てみると意外と綺麗な瞳の色をしている事に気づく。
じっと見つめていると、何だ?と言われたので、別に、と返して顔を背けた。
ディエゴは特に気にした様子もなく、そのまま車椅子を押して行った。

しばらくすると、玄関へと到着する。

「…しかし、実に良いことを聞いたな」

ジョニィの靴を履き替えさせながら、ディエゴは言う。

「…?何が」

「お前とジャイロが付き合っていないという事だ」

「何で?君には何の関係もないだろ」

そうジョニィがそう言うと、ディエゴは意味深に笑ってグリップを握った。
そしてジョニィは気づく、今日のディエゴは実に楽しそうだ、と。

玄関を出ると、辺りにはまだ生徒がいた。
ジョニィが、車椅子押してくれてありがとう、と小さく告げるとディエゴは、大したことはしていない、と言った。
別れの挨拶を交わし反対の道を行こうとした瞬間、名前を呼ばれる。
振り向くと、ディエゴはジョニィの顎を持ち上げ、唇にキスを落とした。

「……俺としては、俺とお前が噂になった方が好ましい」

周りの驚いたような声、刺さるように浴びせられる視線。
ジョニィが何も言えずに固まっていると、ディエゴはまた愉快そうに笑って、今度こそ逆方向へと歩いて行った。

次の日、ジョニィとディエゴの噂で学校中が大騒ぎだったことは言うまでもない。



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