・転生asrp姉/ラッコ鍋ネタ/sgmt、ogt夢(山茶花さん)
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凍えぬ夜



「よりによってなぜこの二人なんかと…」
「おいおいひでぇ言い草だな」
「お前がいなきゃマシなんだよ」
「あーもうこういうところだ!君ら二人がいると十中八九良い雰囲気にはならない、」
 顔を合わせると必ずと言って良いほど一触即発と言った物々しい雰囲気をかもし出す二人に頭を抱える。この二人が仲良く手を取り合って協力する、なんてこと天地がひっくり返ったとしてもあり得ないだろう。どうしたものかと頭を悩ませていても今夜一晩はこの小さな小屋に身を置くしかない状況だ。

「それにしても腹減ったな…」
「たしかに…夕餉の食料を探している最中に雪崩に巻き込まれてしまったし…アシリパは大丈夫かな」
「アシリパさんならきっと大丈夫だ。キロランケも居るし、いても居なくても彼女は一人でも十分立派に雪山を越えられる」
「ふふ、随分と絶賛してくれるね。姉として誇らしいよ。」

「良い雰囲気の中邪魔するようで悪いが、お探しの食料があったぞ」
「わっ、」
 くっついて暖を取る杉元との間を割って入るようにだん!とわざとらしく大きな肉の塊を置いて見せた。
「なんか見たことねぇ肉だがなんの肉だ?」
「わからん。だが食えるだろう。肉なんだから」
「こ、これは…」
「?なまえさん知ってるの?」
 今はだいたい原作でいうとどの位の進み具合なんだろうか。目の前に荘厳な雰囲気を醸し出している大きな肉の塊はどうみてもあの、ラッコの肉で。
 この先の展開を思慮して説明するべきか否か言葉を詰まらせる。
「いや、じつはその、私はその肉あまり得意ではなくて」

「ほぅ?普段俺たちには好き嫌いは良くないと説いておきながら自分は食べずに居ることが許されるのか。アイヌの新しい女というのは随分と他人に厳しく自分に甘いお方であられるようだ。」
「ぐっ、」
 アイヌの女と一括りにしてしまわれるとアシリパまで巻き込んで非難されているようで良い気はしない。自らの顎髭を指先で遊ばせながら挑発するような目線をこちらに寄越す尾形が今までのどの瞬間よりも恨めしくて仕方がなかった。いつもの仕返しと言ったところだろうか。椎茸の恨みは恐ろしい。

 「………………食べよう。」
 長い沈黙を経て苦虫を噛み潰したような表情でそう告げると勝ち誇ったような尾形とこちらを気遣うような目線を送る杉元の姿が目に入った。

「なまえさん本当に大丈夫?」と顔を覗き込む杉元に「大丈夫」と短く答える。実際問題いつ吹雪が止むかもわからない人里離れたこの小屋でいつまでも飲まず食わずではそれこそ野垂れ死ぬ、なんてことになりかねない。出来ることならラッコ以外の獣の肉だったらなんだって食べたいものだがそれは叶わないだろう。私自身きちんとラッコの肉を食したことはなかった。好き嫌いというかこの肉がもたらす効果を知ってしまっているが故に、ラッコの肉を食べる、調理するという過程を避けられないという事実が嫌なだけで。
 なによりも、前世の記憶があるにしろ、自分の生まれ育ったアイヌの教えやアシリパの信念そのものを否定しかねんその言い方に腹が立ち、喧嘩を買ってしまった。頭ではよろしくないとは思いつつも自分の中のわずかな正義感がまさってしまったのがいけなかった。この先なにがあっても、それは自分の愚かさが招いた結果だ。





 ◇◇
「ふ、ぅ…ッ」
 数分前の己に「お前は本当に愚かだ」と叱りつけてやりたい。
 (覚悟はしてたけどまさかこんなにも、…!)
 ラッコの肉がもたらす欲情の効果が想像を遥かに上回るもので、やはりプライドや意地を捨て、幾晩かは飢えを我慢するべきだったと深く後悔する。肉を食すどころか、箸を持つ手すら震え、とても食事をできる状態ではない。
 息をするたびに衣服が擦れ、全身が性感帯になってしまったような気さえする。少しでも楽な空間を作りたいと頭では思っていても身体が言うことを聞かず、換気をしようにも出口まで辿り着ける自信は無かった。
「…な、んか、この小屋暑くない?」
 私より幾分か耐性があるのか「俺ちょっと開けてくるよ」と立ち上がった杉元にほんの少しだけ気が楽になるかもしれないと期待したのも束の間、「馬鹿か貴様、この猛吹雪の中戸を開けてみろ…凍死しても知らんぞ、」と胡座をかいているのもやっとと言わんばかりの苦悶の表情をした尾形が少し吐息交じりに悪態をついた。
「そ、そっか」
 いつものように食ってかかる元気すらないのか、反論することすらしようとせず「俺なんか汗かいてきたから脱ぐわ…」と分厚い防寒着を脱ぎ捨て、ズボンとシャツ一枚のラフな姿でも解いた位置に座り囲炉裏を囲った。首筋に見えた一筋の汗の雫が妙に色っぽくて、本能的に「舐めたい」と思ってしまいごくりと喉を鳴らす。
「ッ!?ちょ、なまえさん…!」
「へ、?」
「ちょっと近すぎやしないかな」
「え、…ぁ!ご、ごめん」
 ぼうっとする意識の中、杉元の焦った声色に引き戻されると至近距離に彼の顔があり、慌てて離れる。無意識下に男性に迫るような体勢になっていた己を「なんてはしたないことを…!」と叱咤していると丁度囲炉裏を挟んで反対側に胡座をかいていた尾形の身体がぐらりと揺れた。
「…ッ、」
「尾形…?!」
 とうとう座っていることさえままならなくなってしまったのか赤らんだ表情のまま倒れ込む尾形。
「っ、おい、大丈夫か?しっかりしろ」
 こんな状況とはいえ意識が朦朧としている尾形が心配になり慌てて駆け寄る。頬をぺちぺちと叩きながら何度か名前を繰り返し「尾形、大丈夫か?私がわかるか、」と呼び掛けると焦点の合わない眼が此方の姿を捉えたように見えた。

「お、尾形だいじょ、っんむぅ!?」
 がっと首の後ろに手を回されたかと思えば思い切り顔を引き寄せられ、乱暴に唇が合わせられる。自分は今キスをされているのかと理解が追いついた頃には舌が口内へ捻じ込められ、いいように弄ばれる。
「ゃ、あ…ん、んぅ、!」
「ふ、ん…」
 尾形の分厚い舌が自分のそれと交わる度、身体がびくりと跳ね上がり、股の中心がぐしゅりと湿り気を帯びていく感覚が生々しくて、恥ずかしくて、羞恥から目を背けるようにぎゅうと強く目を瞑る。
 (下手したらキスだけで達してしまいそう、)
 経験したことのない恐怖にも似た快感の淵に立たされ、背筋がぶるりと震える。頭では駄目だと理解出来ていても、離れようと押し返す力はあまりにもか弱く、彼に全体重を預けてしまわぬよう、床に手をついて今の体勢を保つだけで精一杯だった。

「……っ!てめぇだけいい思いしやがって!」
「きゃっ!」
「っぐ、!」
 一連の流れをただひたすらにぼーっと眺めているだけだった杉元がふと我に返ったように感情を露わにし、口吸いをする二人を引き離したかと思えば、ぐったりと倒れ込む尾形の顔面に容赦無く拳を一つお見舞いする。
「っはぁ、…!」
「いたっ、!」
 ごん!と後頭部が床とぶつかり、ただでさえぐらぐらと湯立つような脳漿が更に掻き回される。こちらを気遣う余裕なんて持ち合わせていない杉元は組み敷くようになまえの腹の上に跨り、着物の合わせの部分を力任せにひん剥いた。
「や、!杉元…!」
「なまえさん…」
 理性なんてとっくに失った獣同然な杉元のギラついた雰囲気に圧倒され、なすすべもなくだらりと身体の力を抜くしか出来ない私はただの餌も同然だった。
「ぁん!触んな、ぃで…!」
「かーわい…こんな乳首びんびんにしといて触んなって言う方が無理でしょ」
「あっ、いや…ッ」
 寒さのせいなのか興奮のせいなのか、つんと主張する胸の飾り。それをぐにぐにと指で押し潰したあと、わざとらしく刺激するよう爪先で軽く引っ掛かれ、快楽から逃れるよう海老反りになると、自らの胸を差し出すように突き出す体勢になってしまう。それに気を良くしたのかうっとりとした表情のままそこに舌を這わせ、赤子のようにじゅ、じゅ、と乳首に吸い付く。
「なまえさん、おっぱいだけでイっちゃえそうじゃない?」
「そんなこと、な、ッぁ!」
「強情だなぁ…」

「まぁいいよ、天候もよくなりそうにないし、夜はまだまだ長いんだから」
 俺らとゆーっくり、いっぱい気持ち良くなろうね、なまえさん。
 そう言って否定の言葉を此方が吐く前に唇を塞いでくる杉元。尾形とは少し違う舌の感覚に酔いしれていると、飲みきれなかった唾液が唇の端から細い糸を引く。
 果たして夜が明けるまでこの身は溶かし尽くされてしまわぬだろうか。









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