鶴の愛猫

「上手に鳴いてみなさい」

言い付け通りに「にゃあ、」と猫の鳴き真似を一声。
「うんうん、上手だ。」
じゅるりと蜜を啜るような水音と共に下腹部から伝って全身を襲う甘い痺れにきゃあと人間くさい声が漏れる

「こらこら、私は『上手に鳴いてみなさい』と言っただろう。」
人の子のようにはしたなく鳴いてはだめじゃあないか。太腿をぺしりと軽く叩かれ叱咤されるも、その刺激でさえ快感に感じてしまうのは日々の躾が身体の隅々まで染み渡っているからだろう。

「…はい、つるみさん」
上手く回らない舌をどうにか動かし、弱々しく返事をすると唇を左端から右端までするりと撫で付けられる。ゆったりと平行移動したかと思えば親指がぐっと口内に侵入しその拍子に溜まっていた唾液がだらりと垂れる。弄ぶようにくるくると指で撫で回され、爪が舌先を軽く引っ掻く度に口吸いをされている訳でも無いのにびくびくと背筋が小さく痙攣する。

「いい子だね」
爪をたてることも、甘噛みすることも、してはいけない。抗うことを、反論することを、覚えてはいけない。この人の前では躾の行き届いた愛らしい飼い猫でなくてはならないのだから

「にゃあ、」
もう一度愛らしく、媚を売り、なにかを強請るように鳴いてみせると、形の整った薄い唇を弓なりに歪ませた。

かぷり。噛み付くように合わされたそれは、躾という名の欲に塗れた「まぐわい」開始を知らせる合図

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