ぼくの、わたしの、

「腹冷えるぞ」
「痛っ!?」
ソファの上に寝転がり、だいぶリラックスしていると注意力に欠ける抑揚のない平坦なトーンで話しながら寄ってきた。と思えばぺしーんと勢いよくお腹を叩かれる。手加減はしてあるんだろうけど、だいぶ痛いぞ。手が出る前に口で教えてくれればいいものを…そう口には出さずじっとりと睨みお返しと言わんばかりに目で訴えてみる。

「こんなだらけた格好見た日には会社の奴ら目を丸くするんじゃないか?」
「月島くんこそ、こんなとこ見られたら、彼女のお腹思いっきり叩くなんて…って幻滅されると思うけど」
ないな。ガサツで素っ気なくてむしろイメージ通りだと呆れられるんじゃないか?鬱陶しいものを手で追い払うような素振りを見せながら言う月島くんに「そうかも」と少し納得してしまった。良い意味で彼は裏表がないと、普段から常々思う。
取っ付き難い鉄仮面な表情筋が先行して冷たい印象を与えがちだけど、常に自然体で、ぶっきらぼうで…それでも、誰よりも人の心に寄り添える優しい人。


「……月島くんだけだよ」
こんなだらしない格好見せるのも、大好きって素直に口に出してぶつけられるのも、全部。

月島くんだけ、

言葉にすることで自分の気持ちを再確認するように静かに紡いだ音は二人きりのワンルームにとろりと溶けていく。
「…まぁ、名前のだらしない格好見せられても幻滅しない奴なんて俺くらいなもんだろ」
そう言いながら、遠くに居たらわからないくらい小ちゃく笑う月島くんを見たら、なんだかどうしようもなく愛おしく感じてしまって。自分の全体重を掛ける勢いで抱き着いてしまった
おい、危ないだろと口調では怒っているように聞こえるが表情は誰も知らないような慈愛に満ちた顔をしていてそれがまた私の胸をきゅうと締め付ける。どう足掻いても私は、この人を好きでいる事を止められそうにない。

「だめだよ月島くん、」
「なにが」
「そんな表情私以外にしちゃ」
そんな、「愛おしいです」なんて言い出しそうな甘ったるい顔。誰にも見せたくない。誰も見ちゃだめだよ。見ていいのは私だけなんだから。そんな子供めいた独占欲が脳内を占めていく

「そんな顔見せるの、私の前だけにしてよね」
そう言いながら控えめな背丈に似つかわしく吃驚するほど逞しい筋肉のついた肩口に顔を埋めながらボソリと呟くと「そんなの、お互い様だろう」という言葉を添えられながら抱き締められた


詰まるところ似たもの同士なのだ、私たちは

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