今日の帝人はヤケにソワソワしている。俺が「どうしたー?」って聞いても、「別に」とか「何でもないよ!」とか話を逸らすばかりだ。朝も、昼休みも、そんで放課後も。


帝人は何か考えてるのか一人、頬を染めてみたり、かと思うと「ダメだ、どうしよう…」と、凹んでたり。とにかくいつも以上にソワソワ、見ているこっちまでなんかソワソワしてしまう。まあ、そんな帝人も可愛いなとか思っちまう俺も相当だけど。


(…そういや、…俺、まだ帝人から返事聞いてねぇんだよなあ)


1ヶ月近く前、玉砕覚悟で帝人にコクったことがある。ほんと、シンプルに。まるでナンパでもしてるみたいに、軽い口調で。


『俺、帝人のこと、すっげー好きなんだけど』

『えっ、な、なに…、いきなり。っていうか…正臣、そんな軽い口調で誰にでも言うからナンパが成功しないんじゃない?』


案の定、帝人は俺の軽い口調に冗談だと思ったらしい。あんとき…俺もつい笑って誤魔化したけど、…あれってやっぱコクって失恋、ってことなんだろうか。…たぶんそうだ。っか帝人は鈍すぎなんだよ。…そりゃあ幼馴染みだし、一番一緒にいて楽だし…。けど、男に好きだ、なんてさ。


ふつう、軽口でも言えねぇだろ、恋愛感情での意味でしか。


(やっぱ振られたのか、俺)

(いや、今度は真面目にコクってみる、とか?)


「…おみ、ねえってば、正臣っ!」

「うおっ、な、なんだよ、デカイ声出すなって、驚くだろ!?」

「正臣が僕の話を聞かないからでしょ!…もう。」

「あ、…はは、ワリィ。
んで、何を話してたんだ?」

「反省してないでしょ、…すっごい軽口だし。…まあいいや。あのさ、正臣。…今日、僕の部屋に来ない?」

「……へ?」

「だから!僕の部屋に来ないかって誘ってるの!」


今日の帝人は明らかにおかしい。ソワソワしてたかと思えば部屋に来いとか、しかも、なんか頬が赤いし。…いつも俺が帝人の部屋に行くと食費がどうのとか言って怒るくせに、なんなんだ、今日のこの帝人の積極性は。


ついポカンとしてしまった俺に帝人は返事をノー!と受け取ったのかシュンとうつ向く。


「……誰かと、約束でもあるの?」


帝人の沈んだ声。
なんだ、なんなんだよ。
俺の告白にはあんな冷たくあしらったくせに、今日の帝人見てると、まだ俺にチャンスありまくりなんじゃねぇの?…って、期待しちゃうんだけど。


「行く!いや、行かせてくださいっ!」

「ほ、ほんとにいいの?
約束とか…。」

「ないないっ、っかあってもキャンセルするし!
俺の最優先は帝人とエロ可愛い杏里だけだから問題ない!」


エロ可愛い杏里、ってのはマズかったか、と若干後悔しつつ「よぅし、早くお前ん家行こうぜぃ!」と笑うと、帝人はホッとしたように笑って頷いた。これは脈ありか?それとも、ただの気紛れ?


そんなのどっちでもいい。帝人の誘いを断るなんて今の俺には出来ねぇし。っかイイ雰囲気にでもなったら今度は真面目にコクってみるか。そんな考えを廻らせると、あっという間に帝人のアパートに到着した。


「正臣、ちょっと玄関で待ってて。あ、ドアは開けたらダメだからね。」

「はいはい、わかったよ。あ、けど一分以内に俺を部屋に呼ばなければ突撃するからよろしくー!」

「えぇっ!?」


少しずつ昂り出す感情を抑えきれなくていつになく俺のテンションも高くなる。帝人は慌ててドアを閉めるとドアの向こうで慌ただしく動いている音が聞こえてきて、つい口許が緩んだ。慌てて狭い部屋を駆け回る帝人を想像して、うん、やっぱアイツは可愛い!と思ってしまう。


「お、おまたせ…正臣。」

「きっちり1分、か。
さすが帝人、真面目さが出てるなあ〜。んじゃ、お邪魔しまーす!」


きっちり1分でドアを開けた帝人の息は絶え絶え。
俺はと言えば、テンションがさらに急上昇。狭い玄関で靴を脱いで部屋に入った瞬間、俺はピタリ、動きを止めた。


(……これ)


「あ、もう見つかったんだ。」

「帝人っ、これ…!!」

「うん、今日は正臣の誕生日でしょ?だから、僕もお祝いしなきゃなあと思ったんだ。僕の誕生日、正臣が祝ってくれたしさ。」


狭い部屋の中心にある小さなテーブルには誕生日ケーキ、それから窓際には"正臣、誕生日おめでとう"と書かれた手書きの垂れ幕。それだけでも俺にとって嬉しいサプライズなのに、帝人はそれ以上のサプライズを俺にくれた。


「誕生日おめでとう、正臣。それから…ね、これは、あの日の、僕からの返事。」

「え、…み、帝人…!?」


ふわっふわっの照れた帝人の可愛い笑顔と、…それから、唇の感触。っか俺、帝人に、キス、されてる!!しかも、…あの日の返事って…。お前、冗談にして冷たくあしらったじゃん。なんだ、なんなんだよ。こんなサプライズをどうすればいいんだ、俺は!


「み、帝人…お前、…っ、」

「へへっ、あんな軽口で僕を好き、なんて言った仕返し。……告白くらい、真面目に言ってくれなきゃ。」

「……。」

「なんかあの態度にムカついて冷たく言っちゃったけど。…今日、正臣にちゃんと返事をしようって決めてたんだ。……正臣、聞いてる?」


ちょっと待て。
じゃあ何か、俺のあの告白は冗談ではなくマジだと知った上で冷たくあしらったと?んで、俺が生まれた日に返事とキス。…なんなんだよ。マジで、ありえねぇ!っか……可愛すぎる。


「み、みかどー!」

「う、うわぁっ!?」

「もうっ、お前ってば可愛すぎだぞ?っか、マジで好き!帝人、大好きだー!」

「ちょっ、声大きいってば!?恥ずかしいから叫ばないで!というか、苦しい!苦しいってば、正臣っ!」


ぎゅうぅっと抱き締めて、やっぱり軽い口調で好きだと告げる俺。そんな俺の腕の中で帝人は苦しいと言いながら笑っている。きっと今までの中で今日がサイコーの誕生日。好きな奴が祝ってくれるだけでも嬉しいのに、帝人も俺を好きだとか、あのツンツンデレの帝人が俺にキスとか。ああヤバイ、ほんと、サイコー!


「帝人、…マジで、ありがとな。」


ようやく離してやれた帝人に今度は少し真面目モードで礼を言う。はにかんで微笑む帝人はやっぱ可愛く見えて、なんだ、俺、コイツにめちゃくちゃ惚れてるんだなあとか思って擽ったくなった。



「喜んでくれたなら、よかった。…あのさ、正臣。
あのときは…冷たくあしらったけど、でも、…僕も、正臣のこと、えぇっ、と…ちゃんと、好き、だからね。」


カァッと頬を真っ赤にした帝人が愛しくなって、またぎゅうぅっと抱き締めた。サンキュ、そう呟いた俺に、「誕生日おめでとう、正臣。…君が生まれてきてくれて良かった、って。僕は、思うよ。」と、これまた可愛いことを言ってくれた。


君から貰ったサプライズ。きっとこの先、どんなプレゼントをもらっても。このサプライズは今世紀最大の、サイコーの贈り物。



















Happy Birthday,Masaomi!
I love you Forever...




正臣生誕祭企画の[愛しの将軍様]へ提出作品でした。

大好きな正臣をお祝いできて幸せです!正帝は初めてですが楽しく書かせていただきました。

企画に参加させていただきありがとうございました。








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