もっと近く限りなく近く

「我が先導者よ」
「違います―。レンって呼んでください」

久しぶりに見る幼いその仕草にダークは困ったように笑いながらその赤い髪の先を手に取り額に掲げる。

「我らは貴方の駒です、そのようなことはとても…」
「ダークは頭が固いんですよ、テツみたいになっても知りませんよ」

むすりと頬を膨らませるその少年に、申し訳ありませんと頭を垂れれば「違います!」と軽く鎧を叩かれる、その行為で一番痛むのは少年の掌であるのでさらに申し訳なくなるが。

「僕はダークと友達なんです、友達は名前で呼ぶものです」

案の定ダメージを受けたらしい右手を擦りながら、雀ヶ森レンは鎧ばかりで柔らかさのないダークの体をぺたぺたと触りながら不満を口にする。
時たま鎧のない部分を見つけては軽くチョップなんかを入れているようだが、これでも鍛えている身にはそれは大した痛みにはならず、やはりちょうど当たりが悪く骨と骨をぶつけてしまった彼が不満を漏らした。

「あとダーク固いです!僕が触れません」

この身に触って何がしたいのかは分からないが、結局の所ダークにはただ困り果てて「申し訳ありません」と機械のように繰り返すことしかできず、しかしそんな些細なやり取りがどうしようもなく愛しくてしょうがなかった。


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