01. 異端者(21/37)

二階も一階と同様、床面積はさほどない。だが飾り棚が並んでいないだけ、広々している様に感じた。

家具は少ない。壁際のキッチンの側にテーブルと椅子があり、あとは殺風景な部屋の真ん中にソファーが場所をとっているだけだ。

ソファーの端っこには、ぐちゃぐちゃっと無造作に丸められた布団が置いてあり、おそらくそこにレミオルさんが住み着いているのだろうと、予想が着く。

「まあ適当に座れよ」

ワイシャツだけを羽織って(これを『服を着た』状態と言えるのか否かは定かではない)サフィナさんは言うが、どこに?と、問いたい。

選択肢は食卓、ソファー、床。ソファーは前に述べたとおりレミオルさんの縄張り感が漂っているし、だからといっていきなり食卓に座るのもどうなんだろうと、悩んだ。しかしそんな私をラズが案内してくれる。

結局ラズに連れられ、食卓の椅子へと腰を下ろした。サフィナさんも紅茶を煎れてくれると迷わず私の正面に座ったから、ラズの導きは正しかったようだ。感謝の気持ちを込めて鼻の頭を掻くと、彼は誇らしげに胸を張っていた。

「さて、どうしたものかね」

湯気の立つ紅茶をひとくち口に持って行き、サフィナさんは切り出した。

「やつは何て言っていたんだっけ?」

「帰りが何時になるか分からないから待つのであればここで待て、と…」

「ああ『ラブ・キャッスル』だっけ?」

「はい…」

彼が悪人でないのは分かる。だがしかし風俗街の派手な壁の色を思い出すとどうしても眉を寄せずにはいられない。

首都にいるときから、男の人の悪所通いには、いかがなものかと常々思わされていた。だというのに、彼の場合は昼間からだ。軽蔑せずにはいられない。

そもそも歳上とはいえ、女性の家に居候だなんてどういった了見なのだろう。夜はこの小さなひとつ屋根の下で二人っきりで過ごすわけだし。

考えれば考えるほどレミオル・ロレンは私の中で地位を低めていく。

しかしサフィナさんは彼をそこまで悪く思っていないようだ。風俗店の件に関してもサラリと述べた。

やはり大人の女性ともなれば、風俗店だなんて全然大したことないのだろうか…。それともレミオル・ロレンのことなんて、サフィナさんは全く気にしていないのだろうか…。

ん…?

つまり私はレミオルさんを気にしているってこと……?

百面相をしていると、サフィナさんに見られていた。頬杖を突き、含みのある笑みを浮かべている。

なんだか恥ずかしくて、頭を振り、レミオル・ロレンについての思考を振り払った。

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