万聖節の戯れ
ハロウィンのお話
「トリックオアトリート。兄上、お菓子を下さい」
ソファに座って寛いでいた兄上の横にちょこんと座ると、顔を覗き込む。
「持っていない」
鬱陶しいという感情を顔いっぱいに浮かべ、素っ気なく言い放たれた。
お菓子が無いんじゃない。ハロウィンに興味がない無いといった様子だ。
「じゃあ、イタズラを…」
「虚無界へ帰れ」
ハロウィンよりボク自体に興味がないのか。何時もなら受け流せる言葉に、ボクの心はずきりと鈍い音をあげた。
「兄上が冷たい…」
普段、感情を表に出さないボクも今だけは酷く落ち込んだ顔をしていたのかも知れない。
「アマイモン」
「はい?」
そんなボクを見兼ねたのか、それともただ楽しんでいるのか、兄上がボクの名前を呼ぶ。
「トリックオアトリート。お菓子を寄越せ。ないなら悪戯するぞ」
「え?」
とっさの言葉に思考が一時停止した。
お菓子は持っている。だけど、ここで正直に言うべきか迷うボクがいた。だって、兄上の言う【悪戯】の意味を知りたかったから。
「持っているのか、持っていないのか、はっきりしろ」
だからボクは―…
「…持ってません」
なんて嘘を吐く。
「お菓子を持っていないイケナイ子には悪戯が必要だな」
嘘を見抜くような鋭い目で見据えられたら、もう視線を外すことなんて出来なくて。
「兄う…ん―…」
言葉を発する前に口を塞がれた。優しくはない、少し乱暴な、そんなキス。
口内をゆっくり、だけど熱く犯していく兄上の舌使いに目眩がする。
「菓子より甘い時間をくれてやる」
このキスより甘いものを考えてみたら、ぶるぶるっと期待に体が震えた。頬に触れた手から熱が伝う。
もう一度兄上の顔が近付いて来ると、恥ずかしくなって目をぎゅっと閉じた。
緊張から閉じた口を解すように、こじ開けるようにして入ってきた舌がボクの舌を捕らえると、さっきよりも深い大人のキスをくれる。
そんな兄上の熱にくらくらと溺れながら、ボクはソファに押し倒された。
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このあとにゃんにゃんやってるといい。
我が家の兄上は攻めじゃないと気が乗らない設定です。