一難去ってまた一難(万事屋+真選組)
 



お天道様がにこにこ笑うある日に起きた出来事。


「か、神楽ちゃん?今の鈍い音は何?」

幸せな夢物語から一瞬にして現実世界に戻された銀時。

「あん?新八殴っただけヨ」

眠い目を強くこすり、目の前におかれている状態を何度も確かめる。

「いや、殴ったってレベルじゃねーよ、これ。俺知らねーかんな」

「おい、か弱い乙女に責任とらす気か」

「か弱い女の子は人を殴ったりしませーん!それに殺ったの神楽ちゃん!」

「人殺しみたいに言うなヨ!多分寝てるだけアル」

「いやいやいや!! これのどこが寝てるの!? 頭から血出てるからね!量半端ないからね!」

「きっとケチャップアル」

「どんな凝った嫌がらせ!?」

「今時のどっきりは進化したアルな」


少し沈黙が訪に続き、銀時が口を開く。

「ぎ、銀さんマジで知んないからな! んじゃ俺仕事だから行くわ!逃げるとかじゃないからね!? 違うからね!? 後始ま…どうにかしとけよ!!」

そう言い残すと危うく滑りそうになった口を抑え、その場から逃げるようにして万事屋を出ていった。


「ちっ。逃げてんじゃねーか。使えない天パーネ」

軽く舌打ちすると床に伏せている新八に声をかける。

「おいさっさと起きろ。いつまで狸寝入りこいてんだ。眼鏡かち割るぞ」

いつもなら即座に返ってくるはずのツッコミがない。それどころか新八はぴくりとも動かない。

「…新八ィ?」

しゃがみこんで新八の顔に耳を近づける。

……息、してないアル

顔が青ざめた。

え?いや、これ流石にヤバくネ?

「新八ィ!! 頼むから生きかえ…起きろネ!!」

胸元を掴んで激しく上下に振る。だけど、その努力も虚しく新八の目が開くことはなかった。


「事情は分かった。要するにてめーが殺っちまったと」

手帳を手にメモをする土方。
殺人の疑いがかけられた神楽は事情聴取を受けていた。

「全然分かってねーヨ、こいつ!殺ってないからな!! ただ殴っただけだからな!!」

「はいはい。凶器で殴ったと」
その手帳を覗き込み、凶器使用と促す沖田。

「おいサドォォオ!! お前人の話聞いてんのかァァ!!」

「生憎、俺ァ殺人鬼さんの言葉なんてモンは理解できないんでねィ」

挑発面に苛立ちが増す。

「てめェェー!!!!」

「止めとけ。また罪を重ねる気か」

殴りかかろうとした所を土方に止められた。

「だから殺してないっていってるネ!!」

「でもな、お前には奴を殺す動機がある。それに行動力も」

「それは…」

痛い所を突かれた。

「ワカメ捨てられたくれーで人殺しちまうなんて気が知れねーや」

「酢昆布ネ!! あんなハゲの代用品と一緒にすんなヨ!!」

酢昆布をワカメと一緒にされるのだけは許せなかった。

「いやいや、ハゲの代用品ってヅラじゃね?ワカメじゃ足しにもならねーよ」

「うぐ…っ!!」

「総悟、その返で止めとけって。お前も職務質問にきちんと答え―」

「うるさいヨ!!」

「ぐほっ…!!」

腹いせも込め、腹に一発クリーンヒットをお見舞いしてやった。

膝から崩れ落ちる土方。ダメージは思ったよりデカかったらしい。

「サド、表出ろや!」

「上等だァ、クソ女!今日こそ決着つけてやらァ」


「ちょっ、二人とも何やってるんですか!! 喧嘩は止めてくださいって!!」

「ダメガネは引っ込んでろ!!」
「悪ィが邪魔しねーでもらえやすか」

「「…て、え?」」

発した言葉と二度見するタイミングが全く一緒な二人。

「ちょ、新八!? お前なんで生きてるネ!?」

「人を勝手に殺さすなァア!!!」

「ぞ、ゾンビだ…」

「ゾンビって何だァァ!! 僕はちゃんと生きてる生身の人間です!!」

「じゃ、じゃあアレは…?」

「アレ?ちょ、新一ィィ!!」

「は?」

床に伏せている新八(仮)に駆け寄る新八(本物?)。

「なんで壊れてるんですか!? 源外さんからの預り物ですよ、コレ!! どうするんです― ぐはっ!?」

頬に衝撃が走る。

「何で僕、殴られ…?」

しかもタチが悪いことにグーときた。

「要するにカラクリっちゅー話か?あ"ぁん?紛らわしいことしてんじゃねーヨ」

「え?何で喧嘩吹っ掛けられて…?」

「ちっ、無駄足じゃねェか。せっかく逮捕できると思ったのによォ」

「…なんかすみません。あの、出来ればバズーカ下ろしてもらえますか」

「で、そいつのガラクタが何だってんだ?」

追い詰められた新八に助け船を出してくれた土方。助かったと心から感謝した瞬間だった。

「えっと、これはですね、僕が土台の試作品、新一です。本物の僕と新一がすり替わってカラクリだと気づかれないか試す実験を―」


「新八ィィ!お前まだこんなとこに…!!」

仕事(確実嘘)から帰ってきた銀時は倒れている新一に駆け寄った。

「…あの、銀さん?僕こっちなんですけど」

「え?何?今の幻聴!? もしかして新八の幽れ―」

「ふざけんなよ。あんたの目の前に居るのが正真正銘の新八で、そっちがカラクリ」

「あ、ホントだ。眼鏡が新八だ」

「今まで眼鏡で判断してたんかいィィ!!」

「じゃああの血は何アルか?本物アルか?」

「あれはオイルだよ。より人間味を出す為に血の色にしたんだって」

一通り事情を聴くと土方は舌打ちを洩らし、言葉を続けた。

「とんだ茶番だな。俺達ァ帰らせてもらうぜ」

「あ、なんか迷惑かけてすみませんでした!」

頭を下げて謝る新八を背に万事屋から出ていく。それに続く沖田。

「…決着は次会った時につける」

「ふん! 望むところネ」

宣戦布告を残し二人は万事屋を後にした。


「よーし、奴等も帰ったことだし一杯飲むか」

「どうせイチゴ牛乳アルヨ」

「うっせェ。イチゴ牛乳だって一種の酒だ―」

ぽん、と肩に手が置かれた。と同時に体全身に悪寒が走る。

恐る恐る振り向く。そこに居たのは―

「…請求書は誰宛だ?」

平賀源外。

「…ぎ、ぎぃやァァァ!! 出たァァァァ!!」

「ごめんなさいィィ!!」

ゴーグルをしていても一発で分かるほどのキレ具合。

完全にキてる!!
完全に殺される!!

三人とも直感でそれを読み取った。と同時に体は動いていて。

「あ、こら!! 逃げんじゃねェ!!」

万事屋を飛び出し全速力で逃げる三人を源外が怒鳴り散らす。
…だけだったらいいものの、平賀さんの気がそんなもので収まるはずもなく。カラクリ達に三人を狙って砲撃命令を出す始末。

容赦なく放たれる砲撃を避けながら逃げる万事屋一行。


無事に事件は幕を閉じ、一件落着!ちゃんちゃん♪

…と、行く筈もなく、新たに命を懸けた逃走劇が幕を開けた。


一難去ってまた一難 終



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