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LINK SIDE:2

尚強くなる匂いに、俺はある賭けに出た。

これから俺が頼ろうとしているヤツが、いかにお人好しで空気の読めるヤツであるかがこの賭けの明暗を分ける。

俺は角を曲がった瞬間獣化を解き、ピカチュウの入ったモンスターボールをとっさに掴んでそのまま匂いの元凶に突っ込んだ。ソイツは俺のタックルに勢い良く仰向けに倒れる。俺はその上に更に倒れ込んだ。
――一層、タバコの匂いが強くなった。

「いっ…テメェ何しやが…」

「一瞬黙れ」

案の定額に青筋を浮かべて怒鳴ろうとするソイツを鋭く睨んで黙らせる。俺の下で潰れていたのは、タバコの匂いを漂わせていた元凶、ヒジカタだった。
ヒジカタは片眉を吊り上げて俺を睨み返したが、何を思ったのか目を見開いて固まった。刹那、背後に殺気を纏った二つの気配が現れる。カムイとアブトだ。

「あれ、あいつらいないよ」

呑気な口調でカムイが呟く。俺はあくまで平静を保とうと小さく深呼吸を繰り返した。

「ねぇ、そこのお兄さんたち。ここに黄色いネズミと黒い狼が来なかったかい?」

依然として道の真ん中で倒れ込んでいる俺たちに、カムイはにこにことそう問うた。ヒジカタが居心地悪そうに身じろぎする。俺は手に持ったモンスターボールを強く握り締めた。

「…あれはあんたらの飼い犬か?俺たちを突き飛ばして向こうに走っていったぞ」

――嘘は、苦手だ。
しかし、臨機応変さは売りである。
俺は向こうと言いながら廊下の突き当たり右辺りを指差した。カムイとアブトはそれを聞くなり「ありがと」と呟き、だっと駆け出した。――俺とヒジカタを飛び越え、廊下を右に曲がって姿を消したのである。
もうカムイたちの気配が探れないくらい遠くに行ったとき、俺はようやく息を吐いてヒジカタを助け起こした。ヒジカタは胡散臭そうにしながら、しかし俺の助け舟を拒まなかった。

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