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「おわっ!?」
轟く雷鳴と共に、青い稲光が天から落ちる。その光の矢は過たずカムイとアブトに直撃――しない!
避けられた!!なんて勘の良さだ。
「危ないなぁ、今の何?」
挙句、カムイは余裕の表情!
『奴ら只者じゃない、逃げるぞ!』
さすがにボクのかみなりが避けられるとは予想外過ぎて、そう叫ぶリンクの声が少し上擦っていた。ボクも手に嫌な汗をかいてしまっている。皆には分かりづらいと思うけども。
今度はリンクに首根を咬まれ、強制的に運ばれていくボク。ちらと視界に入ったのは、猟奇的な笑みを浮かべてボクたちを追ってくるカムイ。
ヤバい。ヤバいよコレ。
と、その時リンクが何かに気付いたように急ブレーキをかけた。その僅かな休止時間にボクはリンクの背中まで移動する。リンクは一、二度鼻をすんすんと言わせた後、よしと呟いて突き当たりの廊下を右に曲がった。
何をする気なのかと問おうとする前に、リンクが走りながら囁く。
『ピカチュウ、自分のモンスターボール持ってるか?』
『は…?持ってるけど』
『次の角を曲がったら、そいつに入れ』
『え?なんで…』
『なんでもだ!』
言ってるうちにもリンクは次の曲がり角に差しかかっている。相変わらずリンクの行動は読めない。けど、リンクは考えなしの無鉄砲じゃない。
ボクは言われた通り、角を曲がった瞬間に自分のモンスターボールの収納ボタンをカチリと押した。刹那、ボクの体は様々な物理的法則を無視して赤と白の球体に吸収される。
リンクもリンクで、その体に変化があった。まず彼の体を黒い陰のようなものが包み込み、その陰がまた一瞬の内に浄化されるように消えていく。が、その陰の中から現れた“リンク”は、狼の姿をしていなかった。
癖の強い金髪と、特徴のある長く尖った耳。すらりと伸びた人間の手足には防具が付けられ、深草色のチュニックを着た若い青年が、そこに現れたのだ。
けど、瞳だけは狼のときと一緒かな。誰かが言ってたけど、リンクの瞳は気高き獣の眼…とかなんとか。とりあえず、綺麗なんだ。
そんな彼の薄い水色の鋭い眼が、かっと見開かれ――角の向こうに立っていた、男の人にぶつかっていった。
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