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そんな諸問題を抱えたまま、俺たちは江戸城に着いた。
正面の城門の前には多くのパトカーが横付けされていて、大勢の剣(この世界の剣は“カタナ”と呼ばれているらしい)を腰に差した男たちが物々しい様子で辺りを固めていた。皆、ヒジカタが着ていた服と同じものを身につけている。

『あの服を着た人たちは、真選組って言うんだ。この世界の警察なんだって』

さすがに正面から江戸城に入れる訳がないので、物陰から様子を窺っていたところ、ピカチュウがそう説明してくれた。すんすん、と辺りの空気の匂いをかぐと、微かにタバコの匂いがした。

『どうする』

と、俺が問えば、

『その辺の塀よじ登って中はいっちゃお』

と、ピカチュウが作戦もクソもないことを宣った。
が、他にいい案も無かったので、ピカチュウの進言通り近くの見張りが居ない塀をよじ登って、こっそり敷地内に侵入することにする。

敷地内に入った後も、辺りは厳戒態勢で非常に行動しにくかった。それでもピカチュウが見つけた通気口に入ってからは監視の目を気にする必要がなくなり、思いの他早く江戸城の建物の中に侵入出来た。
少し、タバコの匂いが濃くなった。

『さてと、これからどうするかだけど』

忍者よろしく天井裏をほふく前進しながら、ピカチュウが囁いた。俺はその隣で尻尾を振って応える。

『“鍵”が何処にいるかは分かんないから、ひとまず情報収集かなと思うんだ』

それにも尻尾を振る。

『聞いた話だと、アラバルはここの偉い人なんだって。で、ここでなんだけど、実はヒジカタさんも真選組の偉い人なんだ』

『…つまり、俺たちはまずヒジカタを探せばいいんだな?』

『そういうこと。まぁ…ヒジカタさんには会えないかもだけど、盗み聞きでも出来れば儲けもんだよ。上手くいけば、アラバルの情報が手に入るかもしれないからね』

だいぶ先の見えてきた江戸城侵入劇に、俺の尻尾は意思と反してパタパタと揺れる。嬉しい時についやってしまう仕草だった。
しかもヒジカタの匂いは分かりやすい。いよいよ見通しがよくなった。

『じゃあ、行くぞ』

『OK、頼りにしてるから』



――が。

世の中、そう上手くいかないものであるということを、俺はすぐさま身をもって思い知るのだった。

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