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LINK SIDE

この世界には、様々な匂いが溢れている。人間ですら排気ガスの匂いに顔をしかめるこの環境に、人間の数万倍と言われる嗅覚を持つ狼の俺は辟易していた。――まぁ、俺も元は人間だが、今は紆余曲折あって狼の姿をしている。
人捜しという任務にこの姿が都合が良かった…というのが一番の理由か。

『…リンク、どう?』

俺の背中に跨るピカチュウが声をかけてくる。俺は一度立ち止まり、すんすんと鼻を地面に寄せて匂いをかいだ。

『大丈夫だ。この道で合ってる』

『やっぱり、さっきヒジカタさんに無理言ってでもパトカーに乗せてもらえば良かったかなぁ。同じ江戸城に行くんだし』

そう、俺たちは事件があったという江戸城へ向かっている。
もし“カギ”であるアラバルが何らかの行動を起こしたのならば、カギがこの世界を破滅に導く日も近いということ。それは多少なりとも牽制しておく必要がある。
この牽制というのが微妙なもので、カービィという転送装置(すまん、カービィ。お前は生き物だって十分理解してるつもりだ)が居ない今、カギの皮を壊してしまえば、それはただの“殺人”になる。その殺人を揉み消すのに無駄な労力を裂いたり、最悪真選組とかいうこの世界の警察に捕まるだろう。
が、カービィさえいれば、カギのエネルギーをマスターの元に送り届けることが出来、その瞬間に俺たちの任務は終了してこの世界から元の世界へと送還されるという寸法だ。

カービィを捜すことが、俺たちの――そしてこの世界の安寧に繋がる第一歩だ。

それはひとまずマルスやロイ、そして銀時たちに任せるとする。この世界に詳しい銀時たちの力添えがあれば、大した苦労はかからないだろう。

問題は、江戸城に向かう俺たちな訳であって。
今度会ったら逮捕するとヒジカタなる人物から釘を刺されている。また、カギの方も俺たちスマッシュブラザーズを警戒しているに違いない。

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