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今、僕はお妙さんとリュカの間に縮こまって座っている。広い居間ではあったが、人数が人数なので、机には今しがたこの屋敷へやってきた来客がぎゅうぎゅう詰めになっていた。
だが、僕が縮こまっているのはそれだけが理由じゃない。

――お妙さんがにこにこしながら、とんでもない地雷を踏んでくれるからだった。

「そう…じゃあ、貴方がネス君が話していた、空振りが得意な小さな将軍さん?」

そう言いながらお妙さんはロイに話しかけている。ロイはひきつった笑みを浮かべて頷いた後、涙目で僕を睨んだ。僕は頑に視線を落として知らんぷりを決め込む。
お妙さんは次々と地雷を踏んでいった。

「それじゃあ、貴方は熱狂的な唯一神論者の天使さんね?それから貴方は…年甲斐もなくはじける段ボールおじさまかしら?そして…あぁ、もしかして貴方、天上天下唯我独尊のモヤシ王子?」

お妙さんは気付いてやってるのか、天然で言ってるのか、僕には判断がつきかねる。リュカは隣で非常に気まずそうな顔をしていた。銀髪のお兄さんはお妙さんの暴走を止める為に何度か声をかけようとしてくれたけど、悉く失敗している。
ロイたちの方は見る気になれなかった。

「…そこの少年の話にはいくらか語弊があるようだね」

お妙さんたちがいる手前だからか、彼らの怒りが僕に振り注ぐことはなかった。が、絶対怒ってる。マルスがいつもの飄々とした口調で言ったのが分かったけど、刺すような視線は暫く僕にまとわりついた。
話は終わったと判断したのか、ようやく銀髪のお兄さんが口を開いた。

「お妙、突然で悪ぃんだが、こいつらをこの家に泊めてやってくれねぇか」

え、と僕とリュカは声を上げる。ロイたちは突然揃って頭を下げた。お妙さんは首を傾げて笑う。

「いいですよ」

「こいつらは泊まる場所がねぇんだ。新八がこの屋敷なら部屋がたくさん余ってるからいいかもっつってな。お前が許可さえ…アレ?今いいって言った?」

あまりにすんなりとお妙さんが了承の答えを返すものだから、銀髪のお兄さんも拍子抜けしたみたいだった。僕にも話の展開が読めない。確かに衣食住の確保は大事だけど、初対面であるはずのこの人たちに宿を頼むのも分からないし、それをすんなり了承するお妙さんも分からない。
それでも、一瞬向かいに座る大人たちに視線をやると、マルスが僕に目配せしてくる。カンがいい僕は、彼が何を求めているのか瞬時に理解してしまったので、仕方なく声を張り上げた。

「わーい、お泊まりだぁ!」

――要するに、さっさと既成事実化しちまえ!ということだった。

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