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LUCAS SIDE

僕の目から見て、ネスは憧れの男の子だ。思ったことはすぐに言えるし、一本筋が通ってる。それでいて厭味じゃない。彼は皆の人気者だ。

対して僕は、気は弱いし、優柔不断だし、皆にお世話されるお荷物になることが多い。スマッシュブラザーズの中でも、僕はネスの弟分のような扱いをされることが少なからずある。
勿論ネスはそんな僕でも友達だと言い切ってくれる。だから僕はネスが好きだよ。

でもね。

「ネス…サボっちゃ駄目だよ。僕たち、一応世界を救う為にこの“江戸”に来たんだから」

ネスは、酷く面倒臭がりだ。
不真面目な訳じゃない。ただ乗り気じゃないことにはとことん無関心なんだ。何よりもまず“楽しさ”を優先させる。まるで餓鬼大将みたいだ。
けれど、さっきも言ったように、ネスはすぐに思ったことを口に出来る。ついでに言えば――凄くよく口が回る。

「何言ってんのさ、リュカ。僕らが真面目にやらなくたって、ピカチュウとかリンクとか、あとはフォックス辺りがちゃんとやるから全然平気。スマッシュブラザーズは個人辺りのポテンシャルが高いから、皆が皆、一生懸命やらなくたって回ってくんだよ。それに僕たち子供だし。子供は子供らしく楽しく遊んで何が悪いの」

「う…でも、皆で力を合わせれば、もっと早く…」

「第一、マスターが暇潰しで企画したような“アソビ”に、僕らが真面目に付き合う義理なんて無いよ。てか、ここはマスターが自分でカギを探すのが筋ってもんでしょ?…馬鹿馬鹿しくてやってらんないし」

…ネスに口で勝とうなんて、百万光年早かったみたいです…。あ、百万光年は時間じゃない、距離だ。
駄目だ、やっぱり僕はこの未知の土地で混乱しているのかもしれない。僕の思考は次第にネスの意見に流されそうになっていく。二人きりなんだから、僕がネスのストッパーにならなきゃ…!もしこのまま遊び惚けた場合、僕とネスは同罪なのだから!

「駄目だよ、ネス!僕たちにはきちんと与えられた使命が……ぅわッ!?」

その場で両足を踏みしめ、力説する。が、ここは往来の真ん中だった。僕は後ろからやって来た通行人とぶつかり、そのまま顔から地面へとダイブする。

「大丈夫、リュカ」

「あらあら、ごめんなさい。私ったら前見てなくて…」

うつ伏せる僕に、ネスと僕にぶつかってきた女の人が心配そうに尋ねる。女の人は、着物だった。テレビでしか僕は見たことがないけれど、これがジャッポーネの民族衣装なんだなぁとぼんやり思う。
…そうか、ここは江戸なんだ。

その着物の女の人は、柔らかく笑って僕に手を差し出した。

「立てるかしら、ボク?」

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