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最初にそれに気付いたのはロイだった。ロイの気のせいか、はたまた彼が人より聞こえのいい耳を有していたのか、俺たちには生憎サイレンの音は聞こえない。
ロイは助けを求めるようにリンクを見た。リンクはまたマルスの後ろに隠れていたが、マルスが「どうなの?」と問うと呟くように答えた。

『もうずっと前から鳴ってた』

「…じゃあ早く言えよ」

『なんか…立て込んでたし…』

言いながらリンクは俺と副長サンをじっと見る。――俺たちのせいか。

そうこうしているうちに俺たちの耳にもサイレンの音が届き始める。かと思えばそれは徐々にこちらに近付き、しばらくすると道路の向こうからパトカーが一台、こちらに猛然と走ってきた。
些か乱暴に真選組の屯所の前にパトカーが横付けされる。と、助手席の窓が開いて、中からゴリラが顔を出した。

「…ってゴリラじゃねェェェ!近藤さんを馬鹿にすんなテメェ!!」

と、突然副長サンが俺の胸ぐらを掴んで怒鳴ってくる。

「ちょっと多串君、人の心読むのは反則でしょ。俺の心は本当に愛した女にしか開かねぇと決めてるんだよ、責任取ってくれんだろーなオイ」

「そりゃあ大変だ。土方さん、ここはきちんと責任取ってアンタが旦那の嫁になるしかありやせんぜ。旦那は甲斐性ねーけど、人間性は俺が保証しまさァ。末永くお幸せになってくだせェ」

「あ、ご結婚なさるんですか?おめでとうございます。お二人の将来に神の祝福があらんことを!」

「気色悪いこと抜かすんじゃねェェェ!っつーか心読んでないし。テメェ独り言がでかいんだよ!そんでそこの天使は話を真に受けんな!!」

「ちょ、トシ?総悟?俺のこと無視すんの止めよう?な?」

ゴリラ――もとい、真選組局長近藤が、泣きべそをかきながらヒートアップする副長サンに話しかける。そこでようやく我に返ったのか、副長サンはゴリラを振り返った。

「どうした、近藤さん」

「ようやく話を聞いてくれた…じゃなくて、とにかく今から江戸城に行くぞ。総悟と山崎も一緒に車に乗れ」

ゴリラはパトカーを示して言う。さすがにこのまま立ち去られては後味が悪いので、俺は慌てて口を挟んだ。

「おいおい、税金泥棒さんたちが城にお呼ばれたァ何事だ?」

「テメェら一般人には関係n「おぉ、万事屋もいたのか。それがな、上様が何者かに襲われたんだ」………近藤さん……」

頂垂れる副長サンは無視して、俺は考えに耽った。
上様といやあ、お飾りとはいえ江戸の最大権力の象徴である。そいつが襲われるってことは――。

ピカチュウを見やる。奴は心なしか目をキラキラとさせて、興奮気味に呟いた。

『アイツの仕業かもしれない』

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