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「…という訳でだな」
ふてぶてしい態度で腕を組む銀髪の男――万事屋は、やる気のない声音と視線をこちらに寄越して言った。
「俺たちはこの子達の世界を救うお手伝いをしてるっつー訳だ」
「そうだぞコラ!文句あっかコルァ!」
「神楽ちゃん、いきなり喧嘩腰にならないで」
いきなり“世界を救うお手伝いをしてます”なんて言われて、素直に信じる奴は頭がどうかしてると思う。しかし、残念なことにその時俺は、頭がどうかしてる奴の仲間入りを見事に果たしていた。
「疑問なら沢山あるが、文句はねぇ。今さっき、そこの黄色いぬいぐるみから似たような話は聞いた…総悟と山崎もな」
俺の両脇に控える総悟と山崎をあごで示す。万事屋は「あー」と気の毒そうな顔をした。お互い、厄介事に巻き込まれたのは同じらしい。
短い情報交換を経て、分かったことは二つ。
一つはこの馬鹿げた異世界からの訪問者の話が、先よりもまた信憑性を得たということ。
もう一つは今回の件に万事屋も一枚噛んでいること。
今更ながら、俺にとって全ての始まりであった黄色いぬいぐるみを睨む。そいつはにこりと笑ってそれに応えた。
――駄目だ、もはや脅しにすらなっていない。
「…で、だ」
唐突にそれまで黙って煙草をふかしていた中年男…スネークが声を上げる。雑然としていた場に静寂が降りた。
スネークは俺たち真選組を見、次いで万事屋の三人組を見る。その様は品定をするようだった。
「なんだヨ、オヤジ」
チャイナが凄む。毎度のことながら見た目と年齢に合わない言動だ。しかし中年男の反応は至って普通だった。
「まぁ落ち着け嬢ちゃん。…それでだな、お前らは多分俺たちが何者で、どういう目的でここに来たのか、今になってはっきり知ったんじゃないのか?」
「まぁ、分かってたつもりでしたけど、そう言われればそうですね」
律義に返事を返すのは万事屋のところのメガネだ。中年男が何を続けるのか分からず、俺や総悟は黙って続きを促した。
続きは中年男ではなく、今回のリーダーだという黄色のぬいぐるみが繋いだ。声は実に淡々としていて、つぶらな瞳と機械的に動く口元からはあまり感情が読み取れなかった。
『正直言って、ボクたちがやろうとしてるのはこの世界の人からしてみれば、ただの殺人なんだ。あ、勿論アイツは人じゃないからこの言い方は正しくないよ。でも、傍目からはそう見えるってこと』
「…何が言いてぇんです?はっきりしなせェ」
苛々したように総悟が問う。そいつは、いかにも軽い調子でそれに答えた。
『あまり周りに迷惑かけたくないから、迷惑だと感じるなら無理にお手伝いしてもらわなくてもいいんだ』
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