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リンク、とは果たして誰なのか。それを尋ねる前に、若い男とぬいぐるみは立ち上がって取り調べ室から出ようとしている。ぬいぐるみは止める間もなく駆けて行ったが、それでも若い男の方は俺の止まれという言葉にかろうじて首だけを振り向かせた。

「仲間のお迎えが来たから、僕たちは失礼するよ。短い間だが、世話になったね」

それだけ言って、憎たらしい程に爽やかな笑みを浮かべて去っていく若い男。それに準じてか、中年の男までもが立ち上がっていた。

「身内の無礼は本当にすまん。あいつ王族だから、色々と仕方ないんだ」

その中年の男は、訳の分からないことをぼやいてから小さく頭を下げ、すたすたと出口に向かってしまう。ようやく俺たちが我に返って奴らの後を追ったのは、バタンと取り調べ室の扉が閉まって、取り調べ室に再び沈黙が流れてからだった。



「副長!あいつら追ってどーすんですか!どうせ奴らも悪い奴をやっつけるだけなんでしょう?」

走りながら、山崎がそんなことを叫んだ。
まぁ確かに奴らの話を要約すればそうなるが、一応奴らが狙っているのは政府の人間だし、俺たちはその政府の犬だし、また奴らの話がまったく本当だと決まった訳でもない。

関わる気はないが、放っておく訳にもいかないという困った事態が発生していた。

「だから斬っちまえばいいんですよ。土方さんは引責辞職しやがれコノヤロー」

「総悟テメェいい加減にしろォォォ!」

賑やかに叫びながら屯所を駆け抜け、狼の遠吠えが聞こえたと思われる屯所の門へと辿り着く。ようやく自称救世主の三人組の後ろ姿が見えて安堵の溜め息を吐こうとして――代わりに俺は悲鳴にも似た叫び声を上げていた。

「万事屋!!」

「あ、多串君」

門の前には、俺たちが追いかけていた三人組の他、あの死んだ魚のような目をした男を中心に構成された万事屋の三人組までもがいた。更にその側に黒い狼と赤髪の男、そして天使――…天使!?天使がいる。
相変わらず俺のことを多串とかふざけた名前で呼んでくる万事屋はこの際無視して、俺は現在の状況の把握に全神経を集中した。否、しようとした。

結果、余計頭が混乱してきた。さすがの総悟もこの状況には閉口するしかないようで、山崎も口をパクパクさせるばかりで明確な言葉はなしていない。

そんな中、いつの間にか俺の足元に来ていたぬいぐるみは、にかっと笑って天使たちを指差した。

『土方さん、紹介するよ。あれが僕たちの仲間なんだ』

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