15

俺たちは今、江戸一番の変わった集団だろう。

先頭を歩くのは黒い狼。その後ろに俺と、傘差しチャイナ、メガネ、貴族、天使が並び、ぞろぞろと江戸の街を歩いているのだ。
先ほどからちらちらとこちらを盗み見る人々の視線が痛い。俺だって好きでこんなことしてんじゃねーんだ!

先ほどリンクの口から、異世界からの訪問者たちのリーダーなる人物“ピカチュウ”を発見したとの情報を得た俺たちは、そのリンクを案内に立ててピカチュウの元へ行く途中だった。
何でもリンクは狼故に鼻が効くそうで、匂いを辿って他のメンバーの捜索が出来た。ロイとは違い、二人でこの世界に“落ちて”きたリンクとピットは、ピットにはひとまずこの世界の情報収集を託し、リンク自身は今回のリーダーの捜索に赴いたという訳だ。

しかし、目立つ。犬に先導されるこの集団は本当に目立つ。

早く目的に着いてくれと願う俺だったが、その考えは次第に逆方向に変わっていった。
何故ならば…

「…銀さん、この道ってもしかしなくても真選組の屯所に向かう道ですよね?」

「言うな新八!せっかく人が気付かないようにしていたことを」

「ニコ中とドSとゴリラに、ジコチューだかセカチューが監禁されてるかもしれないアル」

「ピカチュウな。……確かにリンクやロイはともかく、ピットみたいな奴がそこらをうろついてたら、屯所ぐらいには連れていかれるかもなぁ」

最初の頃に感じていた面倒事を避けようとしていた俺の気分はどこへやら、すっかり協力モードである。まだ仲間集めも本格化してないからか。

でも、出来れば着くのは真選組ではあって欲しくない。別に嫌いじゃないですけど?好きでもないって言うか?とにかく、奴らムサいじゃないですか。

しかしこういう時の嫌な予想とは得てして当たるものである。

『ここだ』

リンクが示したのは、大きな門が鎮座している真選組屯所前。――期待を裏切らないなぁ。
別に真選組の皆様がどうとかじゃないんだ。税金泥棒だとか幕府の犬だとか色々思ったりしてるけど、まぁそれはさておき、この状況の説明が面倒臭いというのが屯所に行きたくなかった本当の理由である。多分奴らは適当な説明じゃいちゃもん付けてくるはずだしな。

俺が一人悶々としているのを尻目に、リンクが突然ちょこりと屯所の前で座り込んだ。何をするのか、と好奇にかられてそちらを見ると――。



わぉーん



――リンクは突然、狼らしい遠吠えを始めたのだった。

[ 17/53 ]

[*prev] [next#]


[←main]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -