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GINTOKI SIDE:2
「…だけど面倒臭いことになってて」
ロイがこの世界に来る羽目になった経緯を静かに聞いていた俺――銀時と、新八、神楽はまるでおとぎ話でも聞くかのように現実味のないそれにすっかり辟易していた。ロイは時々マスターという神様に対する悪態を交えながら続ける。
「マスターは異世界にいる“鍵”のことも探知出来るし、その姿も捕捉出来るんだけど、その情報を独断と偏見で選んだ“リーダー”にしか教えなかったんです」
「…なんでアルか」
「面白いから…だそうです」
曰く、全員にその情報を与えてしまうと、鍵探しもすぐに終わってしまってつまらない、と。ロイが一人でここに落ちて来たのも、最初から全員がそろってちゃつまんないよねーというマスターの計らいらしい。――本当は今回のリーダーだという“ピカチュウ”なる人物と一緒に落ちて来たはずらしいが、そのピカチュウは行方が知れないそうだ。
「何かいい加減な神様ですねー…」
ぼそりと新八がそう呟くと、ロイはやけに大仰に頷いた。
とりあえず、いつまでも万事屋でじっとしている訳にはいかないので、新八、神楽、ロイを引き連れて町に向かう。何でもロイの仲間というのは全部で40人以上も居て、そのどれもが個性的であるから一目見れば分かると言うのだ。
その全員がロイと同じようにこの異世界に一人ないしは二人ぼっちで放り出されているらしいから、それは回収出来るならそうした方が良さそうだ。
人生そう上手くいかないから、まぁ気長に待てよ――とでも言うつもりだった俺は、しかし町の大通りを向こうから歩いてくる少年を見てその口をつぐんだ。
――いた。確認はしていないが、彼はロイの仲間だろう。何しろ個性的だ。
少年は、全身を純白の布で緩く覆っただけの簡素な作りをした服を着ていて、その様はギリシャとかどっかその辺の神話に出てくる登場人物を彷彿とさせる恰好をしていた。身長はロイと同じぐらい。
しかし一番その少年を個性的たらしめていたのは、その背中に生えた一組の大きな翼だった。
鳥よりも尚白いその羽根は、作り物とは思えない滑らかさと輝きを持っている。まさしくその姿は天使。
「あ、ピット!」
予想を裏切らず、ロイがその天使に声をかける。天使はロイに気が付くと花が咲いたように笑ってこちらに駆けてきた。
「ロイさん!近くにいらしてたんですね。良かった、リンクさんと二人でどうしようかと相談してたんです」
「リンクもいるのか?」
「はい!」
矢継ぎ早に交される会話に目を白黒させていると、ロイがあぁと呟いて天使を俺たちに紹介した。
「銀さん、こいつが俺の仲間のピットです」
「はじめまして!」
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