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OKITA SIDE:2

『説明が遅くなったけど』

言いながら短い手足を懸命に動かし、身振り手振りで喋る黄色のぬいぐるみ。つい見た目と中身のギャップにほだされて油断した所、蒼髪のチャラ男に「情報交換といこうじゃないか」と勝手に会話の主導権を握られ、しかし俺たちとしても悪い話ではなかったので、現在俺と山崎、土方さんの三人は、オヤジ、チャラ男、ぬいぐるみの三人と、新しく引っ張り出して来たパイプ椅子に座って相対している。

『まず、自己紹介するね。僕はピカチュウ。こっちのおじさんはスネーク、それでこっちはマルス』

「「よろしく」」

気のない声でオヤジ――ことスネークと、チャラ男――ことマルスが頭を下げる。すると同じように土方さんが「右から山崎、土方、沖田だ」と短く俺たちの自己紹介をした。なんでィ、これじゃあまるきり対等じゃねェか。
俺が憮然とした面持ちで睨み付けるのにも構わず、ぬいぐるみ――ピカチュウは続けた。

『まぁ、驚くなとは言わないけど、実は僕たち、異世界から来ました』

「「は??」」

土方さん以外…つまり、俺と山崎はいきなりのぬいぐるみの発言に唖然とする。
土方さんの落ち着きようを見るに、この話は既に聞いていたようだ。
そんな俺たちの当たり前なリアクションを完全にスルーして、ぬいぐるみは尚も続ける。

『僕たちの世界にはマスターっていう神様がいるんだけど、その人が手違いで時間を制御する“鍵”を時空の狭間に飛ばしちゃってね』

――話がとんでもないスケールになっている。俺はちらとぬいぐるみの左右に控えるオヤジとチャラ男を盗み見た。二人とも苦々しげな顔で「あの疫病神が…」などと呟いていた。俺たちを騙そうとしているようには見えない。もしそうだとしても手が込みすぎている。

『…で、その鍵は時空の狭間から世界の垣根を越えて、僕たちの知らない異世界…たとえばココ…とかに飛ばされちゃった、って訳。で、その時間の“鍵”がないと、僕たちの世界の時間は止まってしまって動かないから、僕たちはマスターの力で異世界を巡って、鍵を集めることになったんだ』

「…それを俺たちに信じろって言うんですかィ?」

『信じなくてもいいよ。ただ、一応言ってるだけだから』

皮肉を込めて言ったつもりが、ちっとも手応えのない返答が寄越されて、俺は幾分機嫌が悪くなる。
しかし次に聞かされた言葉は、そんな不機嫌など吹き飛ばすようなものだった。

『…続けるけど、“鍵”っていうのはモノじゃなくてエネルギーなんだ。どうやら異世界に来る時にそのエネルギーに皮を被ったらしくて、その皮というのがコレなんだ』

突然ぬいぐるみはごそごそと自分の体をまさぐり、何処からともなく一枚の写真を取り出した。土方さんはその場から少しも動かなかったが、俺、山崎、オヤジ、チャラ男は身を乗り出してその写真を覗き込む。

そこに写っていたのは、最近政府に入ったとかいう、天人の顔。確かダキニ…とか言った戦闘種族で、一度江戸に行った時に見た気が…。

『コレが、“鍵”』

馬鹿な、と我知らず口から呟きが漏れる。ただのエネルギーが皮を被って、江戸の政府に入り込むだァ?

『“鍵”は強いエネルギー体なんだ。よりエネルギーの渦巻く場所を求めて移動し、時には自らでエネルギーを生み出すよう働きかける』

「…訳分からねェぞ」

ぬいぐるみの喋る内容に付いていけず、首を傾げる。
そこで今まで黙っていたチャラ男が口を開いた。

「強いエネルギーというのは、総じて混乱や戦争の中に潜んでいる。“鍵”は自らがその因子となって、この世界で大規模な騒ぎを起こそうと行動している…ということさ」

「な…!」

それはつまり、“鍵”とやらのせいで俺たちの生活が脅かされかねないということか。

『まぁ、そんな訳で、僕たちの目的はこの“皮”を破壊し、中のエネルギー体を僕たちの世界に持ち帰ることなんだ』

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