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俺が一人で自分のふがい無さを責めていると、がしゃんと一際騒がしい音がして、俺と密入国者(仮)の男は騒ぎの元凶を振り返る。
沖田隊長と蒼髪の男が抜き身の刀を構えて対峙していた。その間には真っ二つに斬られた簡易デスクが。

「何やってんスか隊長ォ!?事情聴取でしょうが!刀しまって下さいっ」

つか、事情聴取してるのにどうして相手の男は帯刀したままなの!?

「うるせェ山崎、コイツァ俺の獲物だ」

「誰も貴方の獲物を取るとは言ってません!ただここで不祥事起こしたら俺が副長に怒られるでしょうが!」

「オイ、チャラ男。コイツは無視しろィ、ただの空気だ」

「俺空気!?」

「元より君以外の人間は全て素粒子以下に見えている。早く始めよう」

「うわ、初めて会った人に原子レベルで馬鹿にされた!」

もう、なんなんだこの収拾の着かなさは!沖田隊長もきちんと仕事しろよ!そして容疑者なら容疑者らしく大人しくしろよ!
あー神様仏様、誰か何とかしてェェェ!!

「山崎ィィィィ!テメェ総悟のストッパーになれっつっただろうがァァァァ!!」
と、そこへ事情聴取部屋の扉を蹴破って、見慣れた黒髪にくわえ煙草の俺の上司――副長様がやって来た。煩くし過ぎたから、様子を見に来たんだろう。やった、副長ナイスタイミング。早く沖田隊長とこのグダグダな展開を何とか――



―――?



あれ…目の錯覚かな…副長の、あの鬼の副長の肩に、なんか黄色くて可愛いぬいぐるみみたいなヤツが乗ってる。
思わず沖田隊長を見ると、沖田隊長も唖然とした様子で副長の肩に乗ったぬいぐるみ(らしきもの)を凝視していた。

あ…あまりにもミスマッチ。

暫し俺たち全員が言葉を失っていると、僅かに身じろぎしたぬいぐるみがその沈黙を破った。



『あ、マルスとスネークだ』



………このぬいぐるみ、この容疑者たちと知り合いなのか………

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