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YAMAZAKI SIDE

「じゃあ、もう一度質問しまさァ。名前年齢職業住所、きっちりはっきり答えやがれ」

「ははは、それ質問じゃないだろう。君は冗談が下手だな」

「テメェ…俺は気の長い方じゃねェんだ、あんまり調子乗ってるとその口の減らねェ首と胴体、真っ二つに切断してやらァ」

「面白い、やってご覧よ」

ふふふ、はははと不気味な笑い声を上げて、俺の大人げない上司と、一応何らかの容疑者(らしい)蒼髪の男がゆらりとパイプ椅子から立ち上がった。嫌だなぁ、あんまり沖田隊長を煽るの止めてくれないかなぁ。あとでとばっちり食うのは大概俺だし。
かといって俺自身に二人の争いを止める気はさらさら無い。沖田隊長に関わったってろくなことないんだから。という訳で、俺は無難にもう一人の容疑者の方に話しかけた。

「まぁ、あっちの二人は置いといて…スネークさん…でしたっけ?改めまして、山崎です。悪いですけど、どうしてこういう状況になったか教えてもらえませんか」

つい10分程前、沖田隊長は町で二人の男を逮捕してきた。何故逮捕したのか、何故沖田隊長は機嫌が悪いのか、何故俺は隊長に一発殴られなきゃいけないのか、全てに説明がなされず、沖田隊長は逮捕したうちの蒼髪の彼――確かマルスとか言っていた――と激しくバトっている。
本来なら沖田隊長に聞くのが筋――てか、それが当たり前なんだけど、あんな状態の隊長には近づきたくないので、比較的話の通じそうなスネークという男に説明を求めた訳だ。仮にも逮捕されてきた男に状況説明を頼むのも変な気がするが。

「いやぁ、俺もよく分からんうちに連れて来られたからな」

そうだと思います。沖田隊長だし。

「ただうちの連れが、どうもお宅の上司…オキタ…とか言ったか?…あいつにえらくつっかかってな」

沖田隊長につっかかるなんてどんな根性だよ。寧ろ蒼髪の彼を尊敬する。

「それと、どうやら俺たちはこの国に密入国したらしい」

「…“らしい”?」

最後にさらりと言われた言葉に、俺は首を傾げた。いや、密入国だったのか、と沖田隊長の逮捕の正当性にびっくりしたのもあるけど、眼前の男の微妙な言い回しが引っかかったのだ。
男は不精ヒゲを撫でながら頷く。

「まぁ…恐らく密入国というより“密入世界”だと思うんだが…説明が面倒だから密入国ってことでいいだろう。…それより煙草吸っていいか?」

「え?あ…えと、どうぞ…」

何かとんでもないこと言ってくれた気がするけど、突っ込むタイミングを逃した。つか、どんだけフリーダムだこの密入国者(仮)。煙草って。煙草ってオイ。そして頷いてしまう俺もオイ。

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